車両を運転する方すべてに駐車禁止場所や駐停車禁止場所について、法令を理解し遵守していただくのはもちろんですが、とりわけ自家用自動車による有償運送を含む、送迎業務に関わる私たちには切っても切り離せない部分でもあります。この機会に確認しておきましょう。
駐車・停車の定義
駐車と停車については、道路交通法上で以下の通り定義されています。
(定義)
道路交通法第2条第18号・第19号より引用
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
十八 駐車 車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で五分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)、又は車両等が停止し、かつ、当該車両等の運転をする者(以下「運転者」という。)がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態にあることをいう。
十九 停車 車両等が停止することで駐車以外のものをいう。
上記に記載されていることを、以下にまとめます。
駐車とは
駐車とは、道路交通法で以下のように定義されています。
- 車両等が客待ち、荷待ち、故障などの理由により継続的に停止すること
- 5分を超える貨物の積みおろしのための停止
- 車両が停止し、運転者がその車両を離れて直ちに運転できない状態にあること
停車とは
停車とは、駐車以外のものを言い、具体的には以下の通りに定義されています。
- 車両が停止することで駐車以外のもの
- 人の乗降のための停止
- 5分を超えない貨物(荷物)の積みおろしのための停止
駐車と停車の方法の定義
車両を停車または駐車するときには、以下の対応が必要です。
- 人の乗降や貨物の積卸しのために停車するときには、出来る限り道路の左端に沿い、かつ他の交通の妨害にならないようにする
- 車両は駐車するときは道路の左端に沿い、かつ他の交通の妨害にならないようにする
つまり、停車するときは可能な限り左端、駐車するときは左端に沿うことが必要(マスト)となります。
路側帯がある場所に駐停車するときは(路側帯は歩行者または軽車両が通行可能で、自動車・原付などは走行することができません)、路側帯に入り、かつ他の交通と妨害しないようにしなければなりません。法令では路側帯に駐車するときは道路の左端から75cm以上の余地を空けましょう。
また、車道外側線については、自動車・原付など走行時に車道外側線の中に入り込んでも法令違反にはなりません。駐停車時も同様で、車道外側線については駐停車時に余地を空けるルールがないので、道路の左端に停止します。路側帯や車道外側線自体がない場所についても同様です。
(停車又は駐車の方法)
道路交通法第47条より引用
第四十七条 車両は、人の乗降又は貨物の積卸しのため停車するときは、できる限り道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。
2 車両は、駐車するときは、道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。
3 車両は、車道の左側端に接して路側帯(当該路側帯における停車及び駐車を禁止することを表示する道路標示によつて区画されたもの及び政令で定めるものを除く。)が設けられている場所において、停車し、又は駐車するときは、前二項の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、当該路側帯に入り、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。
(路側帯が設けられている場所における停車及び駐車)
道路交通法施行令第16条の6より引用
第十四条の六 法第四十七条第三項の政令で定めるものは、歩行者の通行の用に供する路側帯で、幅員が〇・七五メートル以下のものとする。
2 車両は、路側帯に入つて停車し、又は駐車するときは、次の各号に掲げる区分に従い、それぞれ当該各号に定める方法によらなければならない。
一 歩行者の通行の用に供する路側帯に入つて停車し、又は駐車する場合当該路側帯を区画している道路標示と平行になり、かつ、当該車両の左側に歩行者の通行の用に供するため〇・七五メートルの余地をとること。この場合において、当該路側帯に当該車両の全部が入つた場合においてもその左側に〇・七五メートルをこえる余地をとることができるときは、当該道路標示に沿うこと。
二 歩行者の通行の用に供しない路側帯に入つて停車し、又は駐車する場合当該路側帯の左側端に沿うこと。
駐車禁止場所・駐停車禁止場所について
駐車禁止場所
以下の標識がある場所や、歩道の横に黄色い点線の道路標示がある場所。
上記の場所は、駐車禁止除外の標章を使用できる場所となります。当該標章についての詳細は後述。
駐停車禁止場所
以下の標識がある場所や、歩道の横に黄色い実線の道路標示がある場所。
上記の場所は、駐車禁止除外の標章を使用することができない場所となります。
そのほか、駐車禁止除外標章を掲出していても駐(停)車禁止となる場所
以下の場所は、すべて駐車禁止除外の標章を使用することができない場所となります。
駐停車禁止場所
- 交差点および、その側端から5メートル以内の部分
- 横断歩道または自転車横断帯および、それらの前後の側端からそれぞれ前後に5メートル以内の部分
- 道路のまがり角から5メートル以内の部分
- 踏切および、その前後の側端からそれぞれ前後に10メートル以内の部分
- バス停の標示柱の位置から半径10メートル以内の部分(但し、運行時間中に限る)
- 軌道敷内
- 安全地帯の左側部分および、その前後の側端からそれぞれ前後に10メートル以内の部分
- 坂の頂上付近および、勾配の急な坂
- トンネル
- 高速道路・自動車専用道路上(パーキングエリア・サービスエリアを除く)
法定駐車禁止場所
- 車庫、修理工場などの自動車用出入口から3メートル以内の部分
- 道路工事区域の側端から5メートル以内の部分
- 消防用機械器具の置き場、消防用防火水槽の速単またはその出入口から5メートル以内の部分
- 消火栓、指定消防水利の標識の位置、消防用防火水槽の給水口・吸管投入孔から5メートル以内の部分
- 火災報知器から1メートル以内の部分
- 自車の右側の道路上に3.5メートル以内の余地がない場所
駐車の方法に従わない駐車
- 道路の左側端に沿っていない
- 路側帯で法定の方法に従っていない(道路の側端から0.75メートル以上の余地を空けていないなど)
- 時間制限駐車区間(午前8時から午後8時まで)における枠外駐車
- 時間制限駐車区間(午前8時から午後8時まで)および、時間制限駐車区間適用時間外(午後8時から午前8時まで)の違反成否例
保管場所法違反
- 道路上の場所を自動車の保管場所(車庫代わり)として使用する
- 道路上の同じ場所に引き続き12時間以上駐車する
- 夜間(日没時~日の出時までの時間)に道路上の同じ場所に引き続き8時間以上駐車する
高齢者や障害者・支援にかかわる者が使用できる駐停車関連の各種制度
駐車禁止除外 (道路交通法第4条第2項) | 先ほどから使用できる場所・使用できない場所について例示しているものです。 都道府県公安委員会へ、駐車禁止除外の標章の申請をすることができます。 また、有効期限は3年間となっています。 詳しくは、こちらのページとこちらのページ(最新の改正要点)へ(いずれも埼玉県警察HP)。 |
駐車許可 (道路交通法第45条第1項) | 訪問介護や引っ越し等により、駐車せざるを得ない場合に警察署長に駐車許可を申請するものです。詳しくは埼玉県警HPへ。 |
高齢運転者等専用駐車区間制度 | 高齢運転者等標章を都道府県公安委員会へ申請することにより、所定の場所で駐停車が許可されます。詳しくは埼玉県警HPへ。 |
高齢運転者等専用駐車区間は、駐車禁止除外標章(歩行困難を理由に公安委員会から交付されている標章)の交付を受けている方は、高齢運転者等標章の交付を改めて受ける必要はありません。駐車禁止除外標章を掲げることにより駐(停)車することができます。
【2020年12月~】関係者の合意がある場合、バス停への駐停車が可能に
この記事でもご案内している通り、通常、乗合バスなどの運行時間中は、停留所の半径10m以内は駐停車禁止となっておりますが、2020年12月の道路交通法改正により、関係者(バス会社など)との合意をし、その旨を公安委員会が公示した場合には、乗合バス以外の旅客運送および自家用有償旅客運送事業者は、停留所への駐停車が可能となります。
ただし、乗合バスの運行を妨げるものではないことが条件です。
具体的に、適用できるものは以下の通りです。
- 一般旅客自動車運送(バス・タクシー)が対象
- 乗合バス(一般乗用旅客自動車運送)の場合は、路線定期運行を行うものを除き対象
- 貸切バス(一般貸切旅客自動車運送)も対象
- タクシー事業者(一般乗用旅客自動車運送、介護タクシーの福祉輸送事業限定も含む)も対象
- 特定旅客自動車運送は本規則の対象外
- 自家用有償旅客運送(福祉有償運送・交通空白地有償運送)も対象
- 訪問介護員等による有償運送(ぶら下がり許可)や通学通園に係る有償運送は本規則の対象外
実際に、滋賀県ではいくつか関係者との合意済みの事例があるようです。
なぜ訪問介護員等による有償運送などが対象外なのか
道路交通法によると、以下の通り道路運送法第三条第一号に規定する一般旅客自動車運送事業と、道路運送法第七十八条第二号に規定する自家用有償旅客運送と記載があるので、
- 第3条第1号は「一般旅客自動車運送事業(特定旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業)」
- 第78条第2号は「自家用有償旅客運送」であり、第78条第3号の「公共の福祉を確保するためやむを得ない場合」を含まない。したがって、訪問介護員等による有償運送(ぶら下がり許可)や通学通園に係る有償運送は対象外
というわけです。
もちろん、旅客運送や有償運送ではない、デイサービス・ショートステイなどの送迎も対象外です。
二 道路運送法第三条第一号に規定する一般旅客自動車運送事業の用に供する自動車(同号イに規定する一般乗合旅客自動車運送事業の用に供する自動車にあつては同法第五条第一項第三号に規定する路線定期運行の用に供するものを除く。第四十九条の三第一項において「一般旅客自動車運送事業用自動車」という。)又は同法第七十八条第二号に規定する自家用有償旅客運送の用に供する自動車(同項において「自家用有償旅客運送自動車」という。)が、乗合自動車の停留所又はトロリーバス若しくは路面電車の停留場において、乗客の乗降のため停車するとき、又は運行時間を調整するため駐車するとき(当該停留所又は停留場における停車又は駐車であつて、地域住民の生活に必要な旅客輸送を確保するために有用であり、かつ、道路又は交通の状況により支障がないことについて、内閣府令で定めるところにより、同法第九条第一項に規定する一般乗合旅客自動車運送事業者、公安委員会その他の当該停車又は駐車に関係のある者として内閣府令で定める者が合意し、その旨を公安委員会が公示したものをする場合に限る。)。
道路交通法より引用