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自家用自動車を用いて、有償で高齢者や障害者の送迎を行うには?

高齢者・障害者に対する自家用自動車を用いた有償送迎サービスのはじめ方

日本国内では、条件付きではあるものの、自家用自動車を用いて有償でタクシーのような送迎業務を行うことができるようになっています。

自家用自動車とは、白色もしくは黄色のナンバープレートの自動車(軽自動車・普通自動車等)を指します。そして、自家用自動車を用いて有償で送迎輸送(これを、有償運送といいます)を行う場合には、基本的に2種免許の取得は不要です。これだけ聞くと、とても魅力的なように感じますね。現状、2種免許を取得していない方が、新たに免許を取得するとなると時間的・費用面でのコスト等が必ず発生するからです。

これらの、自家用自動車を用いた有償運送(主に人を送迎輸送するもの)を、以下に分類してみました。

福祉有償運送実施事業者:市区町村(自治体)および、NPO法人・社会福祉法人等の非営利法人・団体
利用対象者:介護を必要とする高齢者・障害者など
※他の有償運送とは異なり、利用対象者の名簿管理(会員管理)が必要。利用者は、サービスを利用するためには会員登録が必要。
交通空白地有償運送実施事業者:市区町村(自治体)および、NPO法人・社会福祉法人等の非営利法人・団体
利用対象者:地域に在住する住民・観光旅客など、その地域の来訪者(健常者を含む)
訪問介護員等による有償運送(ぶら下がり許可)実施事業者:タクシー事業(一般乗用自動車運送事業、介護タクシー(福祉輸送事業限定)を含む)または特定旅客自動車運送事業を行う訪問介護・居宅介護事業者(営利法人もしくは非営利法人)
利用対象者:上記の訪問介護・居宅介護サービスの利用者(高齢者・障害者)
※利用可能な範囲は、訪問介護(介護保険)・居宅介護サービス(居宅介護・行動援護・同行援護・重度訪問介護・移動支援)の範囲内に限られる。いわゆる保険外サービスとしての提供は不可。
通学通園に係る有償運送実施事業者:幼稚園、保育所、小学校、中学校、盲学校、聾学校又は養護学校
利用対象者:上記学校等に通う幼児、児童又は生徒
災害のため緊急を要するとき
上記に該当しない場合現状では、自家用自動車で有償運送を行う選択肢なし。
個人事業主(法人を含む)の場合は、介護タクシー(福祉輸送事業限定)の許可申請を行うことで介助が必要な高齢者・障がい者に対し、有償での送迎輸送が可能。事業用自動車という扱いになり、二種免許取得が必要。

上記いずれかの中で、介護・障害福祉サービスを提供している事業者が、自家用自動車を用いて有償運送を行う場合には、現実的には以下の選択肢となります。

  • 福祉有償運送(79条登録)
  • 訪問介護員等による有償運送(78条許可)

NPO法人・社会福祉法人等の非営利法人・団体の場合には福祉有償運送もしくは訪問介護員等による有償運送、営利法人(株式会社・有限会社・合同会社・合資会社等)の場合には訪問介護員等による有償運送といった選択肢になります。

ちょっとした注意点

よく「自家用有償旅客運送」という言葉が出てきますが、この自家用有償旅客運送というキーワードに対応するものは、正しくは上記のうち福祉有償運送・交通空白地有償運送の2種類だけが当てはまります。

時々、他の有償運送についても「自家用有償旅客運送」と表記しているホームページ等がありますが、これは正しい表現ではありません。

他の類型も含めて、国土交通省が「高齢者の移動手段確保のための制度と地域の取組モデルについて」整理・解説したパンフレットを公表しました。よろしければご覧ください。

目次

有償運送の許可や登録が不要な場合

主に以下の場合には、有償運送の許可や登録が不要とされています。

本内容については、令和6年3月1日に「道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドラインについて」という新ガイドラインが発出されました。下記以外の内容などについては、本ガイドラインを直接ご確認ください。

今回(令和6年3月1日)の改定のポイントは、以下の通りです。

  • 無償運送について
    • 従来のガソリン代・有料道路代・駐車料金のほかに、新たに実費対象として保険料・車両借料(レンタカー代)を追加しました。
  • 宿泊施設・介護施設の付随送迎
    • 商店等への立ち寄り、観光スポットへの送迎も可能であることを明記しました。
  • ツアーやガイドに係る付随送迎
    • ツアーやガイドに付随して運送が可能であることを明記しました。
  • 運送サービスの有無で料金に差を設ける場合
    • 従来は運送サービスの有無で料金に差を付けることはできなかったが、実費徴収(ガソリン代等)の範囲に限り、収受が可能であること(運転手の人件費に充てなければ問題ないこと)を明記しました。
  • 団体運営の支援として、国や地方公共団体からの補助金、第三者からの寄付金・協賛金の取扱を変更
    • 団体運営の支援として、国や地方公共団体が団体職員(運転手、その他の業務を行う者も含む)の人件費などに充てる活動団体のための補助金であることを明確化し、また、個々の運送と紐づかない活動団体のための寄付金・協賛金などを第三者から得ることも可能になりました。
  • 地縁団体が行う運送サービス
    • 会費で行う運送サービスが可能であることを明記しました。

詳細や具体的な例示については以下の通りです。

  1. 対価・報酬を得ずに送迎を行う場合(他の名目での報酬もまったく得ていない場合)
  2. 利用者が自発的な(好意での)謝礼を支払う場合(運転手や仲介者等が謝礼の支払を求めない場合)
    • この謝礼を隠れ蓑にして営利事業を行うことは想定されていない。したがって、運賃表を定めて金銭を支払う場合、口頭・ジェスチャーにより利用者に謝礼を促す場合、謝礼の名を借りて実質的には運賃を求める場合は有償運送とみなし、許可や登録が必要。また、いわゆる白タク行為による運送に対して、利用者から「謝礼」の名目により金銭等が支払われる場合でも、ここでの「謝礼」にあたる拡大解釈はされない。
  3. 利用者からの給付が、実費相当額(ガソリン代・有料道路代・駐車料金・保険料・車両借料(レンタカー代))を得て(または割り勘を含む)送迎を行う場合
    • 保険料とは、ボランティア団体・NPO等による無償運送行為を対象とする1日保険(年間契約を含む)を指すが、当該車両に元々かけられている自賠責保険・任意保険は対象外。
    • レンタカーの借受にともない加入する免責補償制度及び休業補償といった一時的な保険は対象。
    • ガソリン代の算出は、一般的には直近のガソリン価格等を利用して「走行距離÷燃費(km/l)×1lあたりのガソリン価格(円/l)で計算するが、運送が頻繁な場合には一定期間「1kmあたり◯円」と定めて概算することも可能。
  4. 宿泊施設(ホテル・旅館等)が、駅や空港、港等と宿泊施設間の無償送迎を行う場合。
    • 利用者の要望に応じて、送迎途中で商店等に立ち寄ることも可能。
    • 送迎が長距離に及ぶ場合も、利用者対象のサービスとして社会通念上妥当な場合は許可や登録は不要。
    • ホテル・旅館・農家民泊等が近隣施設や観光スポットへの運送(スキー旅館からゲレンデ、旅館から海水浴場、宿泊施設からイベント会場等)を無償で行うことも可能。
  5. 施設送迎(介護施設、学校その他の施設)への無償送迎を行う場合。
    • 障害福祉サービス事業者(具体例として、児童発達支援・放課後等デイサービス・就労移行支援・就労継続支援(A型・B型)・生活介護・日中一時支援(地域生活支援事業)など)等が行う送迎輸送で、市町村が従来の送迎加算の範囲内の額(利用者負担分を含む)を給付する場合に関する記述は、ガイドラインから記載されなくなったものの、実際には送迎加算や通所介護(デイサービス)・通所リハビリ施設等の送迎減算を処理しても許可や登録は不要であろうと考えられる。
    • この場合も、施設利用者からの依頼・要望に応じて送迎途中で商店等に立ち寄ることも可能。
  6. 生活支援サービスなどとの一体の無償送迎を行う場合。
    • 通院や買い物等に同行する支援、子どもの送り届けが含まれる「子どもの見守り支援」など、提供サービスに人の運送が付随して行われるものは、当該サービスが有料でも反対給付がなければ許可や登録は不要。
    • 提供サービスの実態が目的地への運送のみの場合は有償運送とみなし、許可や登録が必要。
    • 子どもの塾・習い事・部活動等への無償送迎を、地域のボランティア・互助活動として組織的に行うことは差し支えないが、地域のタクシー事業者の中には「子育てを応援するタクシー」を実施している事業者もおり、こうしたサービスの活用促進にも留意されたい。
  7. ツアー等のサービス提供事業者がツアー参加者を対象に行う、サービスに付随した無償送迎を行う場合。
    • ダイビング・シュノーケリング等のマリンスポーツやスノーシューツアー等の事業者が、ツアー利用者を近隣の駅やバス停、宿泊施設等からツアー実施場所まで利用者を対象に無料サービスで行う無償送迎。
    • サイクリング・ツアー等で、ツアー参加者の突発的な体調不良・天候不良等により、ツアー参加者を伴走車に乗せて行う無償送迎。
  8. 通訳案内士等による観光ガイド事業との一体となる無償送迎を行う場合。
    • 国や地方公共団体および、公益社団法人日本観光振興協会ならびに公的機関が認定・付与する、資格を有する観光ガイドが、ガイドのために人を運送する場合で、運送に特定した反対給付がない場合。
    • ただし、観光ガイドと称していても、サービスの実態が当該地域に関する専門知識や高度な語学力等に基づくガイドの提供ではなく、目的地への運送のみの場合は有償運送とみなし、許可や登録が必要。
    • 実費負担を一部の利用者に求めるために利用料の差異を設ける場合は、利用料と運送サービスの実費相当額負担分を明確に分けて、必要に応じ利用者に説明できるようにすることが望ましい。
  9. 上記4~8の中から、たとえば有料の施設利用や宿泊施設・幼稚園等に付随する送迎(運送)サービスについて、送迎利用の有無にかかわらず利用料に差異がない場合や、上記3の実費費用を別途徴収する場合については許可や登録は不要。
    • また、上記のほかに送迎利用の有無によって利用料に差異を設ける場合、実費の範囲内の費用(上記3のほかに、車両償却費・車検料・保険料等の車両維持費)を含めることも差し支えない。
  10. 幼稚園等において、「通学通園に係る自家用自動車の有償運送許可」を得た場合には、利用者から運行にかかる人件費相当を徴収することが可能になります。
  11. 運送主体が「利用者以外から収受するもの」は、原則として「運送サービスの提供に対する反対給付」とは解さず、許可や登録は不要。
    • ただし、利用者以外の第三者が、利用者に代わって運送主体に対し運送の反対給付を行う場合は有償運送とみなし、許可や登録が必要。
    • 国や地方公共団体が運送サービスを行うボランティア団体に対し、団体職員(運転手、その他の業務を行う者も含む)の人件費などに充てるものとして、団体の運営に要する費用の補助金を支出する場合は、許可や登録は不要。ただし、国や地方公共団体が運送利用券を直接または間接的に給付する場合は有償運送とみなし、許可や登録が必要。
    • 団体運営の支援として、個々の運送と紐づかない寄付金、協賛金などを第三者から得る場合は有償運送には該当せず、許可や登録は不要。
  12. 乗降介助が介護報酬の対象となっている場合(介護保険の訪問介護サービス等)は、有償運送の許可や登録が必要。
    • 障害者総合支援法に基づく居宅介護、行動援護、同行援護、重度訪問介護、重度障害者等包括支援および、地域生活支援事業の移動支援で運送を行う場合も同様。
    • 有償運送の許可や登録を得ずに行う運送行為に対しては、介護報酬の給付の対象外とする。
  13. 介護予防・日常生活支援総合事業の訪問型サービスB・Dおよび、一般介護予防事業の一環として行う運送において、「提供するサービスに人の運送が付随して行われるもの」であり、運送に特定した反対給付がない限り、有償運送には該当せず、許可や登録は不要。
  14. 地域支援事業交付金等から補助されるガソリン代等の実費ならびに、ボランティアに対するボランティアポイントおよびボランティア奨励金は運送の反対給付とはみなされないため、有償運送には該当せず、許可や登録は不要。
  15. 他人の車両の運転を委託されて送迎を行う場合(自動車を用意せず、運転役務のみを提供する場合)は、運転役務の提供者に対して報酬が支払われたとしても有償運送には該当せず、許可や登録は不要。
    • ただし、運送の態様や対象の旅客の範囲によっては、自動車運転代行業・人材派遣業等とみなされる場合があるので、それぞれの関係法令が提供されることに留意が必要。
    • 具体例として、「利用者の所有する車両を使用して送迎を行う場合(利用者自身が借りたレンタカーを含む)」「企業所有の車両を使用し従業員送迎を行う場合で、運転業務を外部に委託する場合」などが有償運送には該当せず、許可や登録は不要。
  16. 社会福祉協議会、自治会・町内会・青年会、まちづくり協議会、マンション管理組合、老人クラブ等の地縁団体の活動として、会員が負担する会費で行う運送サービスについては有償運送には該当せず、許可や登録は不要。
    • 会費で車両を調達することが可能。
    • 会費からサービスを提供するための運転者に報酬を支払うことが可能。
    • 運送サービスの利用の有無に応じて、実費徴収(ガソリン代等)の範囲に限り、会費に差を設けることが可能。

など。

上記のサービスは、運転する者が運転免許証を持っていれば、送迎車を運転することが可能とは考えられますが、留意事項としては以下について利用者が十分認識した上でサービス提供が行われる必要があります。

  • 上記の運送行為は道路運送車両法上の法規制の対象外であり、同法が定める輸送の安全および利用者保護のための措置が担保されていない旨(自主的に措置を行っている場合にはその旨)
  • 事故が生じた場合の責任の所在
  • 損害保険の加入の有無および補償内容

許認可や登録が不要な送迎を開始する場合には、その行為を行う前に、道路交通法に抵触するかどうか、運輸局および運輸支局に問い合わせしてください。

その他、こういったケースがどのような運送形態(有償・無償)に当てはまるのか、といった個別事案についても同様です。

法規制の対象となるかどうかの確認のために当社にご質問いただいても、このようなご質問にはお答えが出来ません(お役に立てることはありません)のでご容赦ください。仮に、何らかの回答を当社から行ったとしても、それは何らかの保証には繋がらないからです。

訪問介護・居宅介護等の事業所が、通院等乗降介助などの介護報酬の請求を行う場合、運送の許可や登録が必要!

訪問介護・居宅介護等の事業所に所属している運転者が、自らの自動車を用いて送迎輸送を行うことに伴い、通院等乗降介助・身体介護中心型等の介護報酬(介護給付費)の請求を行う場合には、必ず「有償運送」などの許可や登録が必要となります。

  • 福祉有償運送(79条登録)
    • もしくは、交通空白地有償運送(79条登録)
  • 訪問介護員等による有償運送(78条許可)
    • もしくは、介護タクシー(福祉輸送事業限定・4条許可)や特定旅客自動車運送(43条許可)

上記のいずれかの許可または登録が必要です。

送迎業務を行わず、単に利用者の居宅内でサービス提供(業務)を行う場合のみであれば、有償運送等の許可や登録は不要ですが、自動車を用いて送迎輸送を行い、介護報酬の請求を行う場合には有償運送の許可や登録等が必要になってしまいます。

介護保険の訪問介護や、障害者総合支援法に基づく各種サービス

有償送迎にかかわる、介護保険上の訪問介護(要介護者対象)や、市町村事業の介護予防・日常生活支援総合事業(要支援者や基本チェックリスト該当者が対象)、障害者総合支援法に基づく居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護・移動支援との関係について、以下の記事でまとめました。

福祉有償運送・訪問介護員等による有償運送を始めるには、それぞれハードルがある

福祉有償運送や、訪問介護員等による有償運送を始めるには、それぞれ一定のハードルがあります。詳しく紹介します。

福祉有償運送のハードル(交通空白地有償運送も同様)

市町村または都道府県等が主宰する、地域公共交通会議等(地域公共交通会議、協議会、運営協議会)を開催し、これらの場においてタクシー等の公共交通機関によって移動制約者に対する十分な輸送サービスが確保されていないと認められ、その必要性について十分な協議が調う必要があります。

地域公共交通会議等で協議が調った後に、運輸支局等で実施団体の登録を行います。

上記の条件は、福祉有償運送はもちろん、交通空白地有償運送も同様です。

福祉有償運送・交通空白地有償運送では、白ナンバー車での保険外サービスでの(自費による)送迎輸送が可能

福祉有償運送や、交通空白地有償運送では、自家用自動車(白ナンバーもしくは黄色ナンバー車)を用いて、保険外サービスとしての(いわゆる、利用者の支払いが自費による)送迎輸送を行うことが可能です。

白ナンバー車で保険外サービスでの(自費による)さまざまな目的地への送迎輸送が行える、唯一の選択肢といっても過言ではありません。

当社ブログに、福祉有償運送・交通空白地有償運送の登録の流れなどの解説記事がございます。

訪問介護員等による有償運送のハードル

訪問介護もしくは居宅介護等の事業所指定だけではなく、事前に必ず介護タクシー(福祉輸送事業限定・4条許可)または特定旅客自動車運送(43条許可)の許可の取得が必要になります。

これらの自動車は、緑ナンバーもしくは黒ナンバー車となります。運転手も、2種免許所持者が必要となります。

介護タクシーまたは特定旅客自動車運送の許可を取得した後に、訪問介護員等による有償運送の許可申請を行います。

訪問介護員等による有償運送では、保険外サービスの提供(送迎輸送)が行えない

保険外サービスとしての(いわゆる、利用者の支払いが自費による)送迎輸送を行う場合には、介護タクシー(福祉輸送事業限定・4条許可)を用いて行います。つまり、2種免許の運転手が、緑ナンバーもしくは黒ナンバーの自動車を用いて送迎輸送を行います。

自家用自動車を用いた訪問介護員等による有償運送では、ケアプランの範囲内や介護報酬の発生する範囲内での送迎輸送(つまり、通院等乗降介助や身体介護中心型などの介護報酬(介護給付費)が伴う送迎)に限定されます。

通院等乗降介助・身体介護中心型等の送迎輸送は、介護タクシーでも行うことができる

通院等乗降介助・身体介護中心型等の介護報酬(介護給付費)が伴う送迎輸送は、自家用自動車だけが行うことができるものではありません。事業用自動車(緑ナンバーもしくは黒ナンバー車)である、介護タクシー(福祉輸送事業限定・4条許可)でも行うことが可能です。

これは、一般的に「介護保険タクシー」と言われるものです。

まとめると、介護タクシー(福祉輸送事業限定・4条許可)の許可を取得している訪問介護・居宅介護等の事業者は、介護タクシーでのみ自費による送迎を行うことができ、介護報酬(介護給付費)を伴う送迎は、介護タクシーおよび訪問介護員等による有償運送で行うことが可能です。

ただし、介護タクシー・訪問介護員等による有償運送ともに、それぞれ許可を取得する必要があります。

当社ブログに、介護タクシー・訪問介護員等による有償運送の許可取得の流れなどの解説記事がございます。

通院等乗降介助(介護保険タクシーやぶら下がり許可)や、移動支援などについては、以下の記事にまとめました。

自家用自動車による有償運送にかかわるQ&A

自家用自動車による有償運送について、様々な疑問について回答いたします。

自家用自動車を用いて有償運送を行うには、どの資格が必要ですか?
  • 福祉有償運送(79条登録)
  • 交通空白地有償運送(79条登録)
  • 訪問介護員等による有償運送(78条許可)

を実施するためには、福祉有償運送運転者講習の修了等が必要になります。運転者が取得すべき資格等の詳細は、こちらの記事をご確認ください。

通学通園に係る有償運送の場合においては、資格取得(講習修了)は不要です。

セダン等運転者講習が必要な場合は?

福祉有償運送で、福祉車両以外の自動車を用いて送迎輸送を行う場合のみ必要になります。運転者が取得すべき資格等の詳細は、こちらの記事をご確認ください。

ケア輸送サービス従事者研修修了者、介護福祉士、訪問介護員、居宅介護従事者の場合には、セダン等運転者講習の受講が免除となります。

運転手は全員、資格が必要ですか?

運転手全員、福祉有償運送運転者講習の修了等が必要になります。運転者が取得すべき資格等の詳細は、こちらの記事をご確認ください。

無許可で(許可や登録を行わずに)有償運送を行うとどうなる?

無許可で有償運送を行うと、刑事責任を負う場合があります。その具体的な事例は以下の通りです。

無許可で有料スクールバス運行、学校法人など書類送検/横浜

無許可で有料のスクールバスを運行したとして、鶴見署は8日、道路運送法違反(有償運送)の疑いで、学校法人「ホライゾン学園」と、担当理事の男(67)を書類送検した。

カナロコ(神奈川新聞)の記事より引用(2010年7月9日の記事)
送迎代として請求せずに、あくまで買い物付き添い代として請求した場合はどうなる?

名目は問わず、実質的に送迎を伴う行為で金銭を得ることが反復・継続する場合には、白タク行為に該当します。

名目ではなく、実質的に送迎の対価として金銭を得て、その行為が反復継続するのであれば、白タク行為となります。

弁護士ドットコムより引用

他にも、「買い物付き添い代」としての名目ではなく、「写真撮影代」としてトゥクトゥクで送迎を行った場合に、白タク容疑がかけられている事案もあります。

男は県警の調べに「運賃ではなく写真撮影代」などと説明したが、15分3千円などの料金をとり、客を乗車させてホテルや駅に移動していることなどから、白タク行為にあたると判断した。

朝日新聞デジタルより引用
どこまでが白タク行為(有償運送)に該当しない?

具体的には、ガソリン代・有料道路代・駐車料金の合計金額(これを特定費用という)までは、白タク行為(有償運送)に該当しないとされています。

また、自己の施設の利用を目的とする送迎を行う場合、送迎の有無によって対価・報酬に差が発生しない場合には、自家輸送(無償運送)となり、許可や登録は不要です。

通所・施設介護系の送迎の場合には、以下の送迎加算や減算がありますが、

デイサービス(介護)利用者に対して、居宅と事業所間の送迎を行わない場合、送迎減算(片道につき-47単位)
日中・短期サービス等(障害)送迎加算(Ⅰ)21単位もしくは、送迎加算(Ⅱ)10単位など

これについては、平成18年9月に国土交通省・厚生労働省の連名で出された「介護輸送に係る法的取扱いについて」によると、当分の間「自家輸送」として扱うことが明記されています。

今行っている送迎が有償運送に該当するかどうか不安です。

お近くの運輸支局にお尋ねください。

福祉有償運送運転者講習・セダン等運転者講習を受講したい方は

福祉有償運送運転者講習・セダン等運転者講習の受講が必要な方は、以下のページからお申込みください。ご希望日がない場合には、出張講習にも対応しています。

自家用自動車による有償運送には、貨物輸送タイプもある

自家用自動車による有償運送は、人の送迎輸送を行うだけではなく、貨物輸送の分野でも活躍しています。たとえば、以下のものがあります。

  • 事故車等の排除業務に係る有償運送許可(自家用車積載車による有償運送許可)
  • 繁忙期有償運送(貨物自動車運送事業者による、繁忙期等の有償運送許可)

自家用自動車による有償運送は限定的な用途で、対応範囲が幅広いのは介護タクシー

自家用自動車による有償運送には、実施可能な法人が限られたり、細かい部分で輸送条件が限られたりと、様々な制限があります。送迎の対象者を高齢者や障害者に限れば、もっとも制限がないのは事業用自動車(緑ナンバーもしくは黒ナンバー車)の介護タクシー(福祉輸送事業限定・4条許可)です。2種免許をお持ちの方であれば、介護タクシーが現実的な選択肢となります。

健常者を含む送迎輸送を行う場合には、交通空白地有償運送だが実施可能な地域が限定的

まったく病気をしていない健常者を含む送迎を行う場合には、自家用自動車を用いたものは交通空白地有償運送となりますが、実施可能なエリア(地域)は限られます。具体的には、バスやタクシーなどの公共交通機関で住民などに対する移動手段が確保できないと認められる地域に限られます。

交通空白地有償運送では、住民などに対する日常的な移動手段としてはもちろんですが、観光利用を目的とした送迎輸送に活用することも可能です。ただし、観光利用を目的とした送迎輸送を行う場合には、その利用目的を含めて地域公共交通会議等で協議が調っていることが条件のようです。

もっとも制限がないのは、緑ナンバーのバスやタクシーの開業

その制限をなくすためには、事業用自動車(緑ナンバー)のタクシーやバスの開業が選択肢となりますが、そのハードルは相当高くなります。

自家用自動車による有償運送の登録・許可の要件や手順について調べる方法

自家用自動車による有償運送(送迎輸送を行うもの)の登録・許可の要件や手順などについて、詳細な記事は当社のブログで解説しています。

それぞれ、上記リンクよりお読みください。

【最後に】この記事を読んでいただいたみなさまへ

この記事を読んでいただいて、みなさまの現場でお役立ていただければ大変うれしく思います。

また、記事をお読みいただいた方から、時折当社へ「福祉有償運送」や「訪問介護員等による有償運送(ぶら下がり許可)」などの許認可申請に関するご質問やご要望をいただくことがございます。しかしながら、ある程度以上のお話しになった場合には、該当する許認可申請などについては、必ず管轄の行政機関へ直接お問い合わせいただくようにご案内させていただくか、もしくは行政書士へお繋ぎをするなどの対応させていただく場合がございますのでご了承ください。

スタッフより

当社では行政書士が不在のため、一定の内容以上の許認可申請にかかわるお話しになった場合については、上記の通り回答できない場合がございますので予めご容赦いただくますようお願い申し上げます。

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