新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)・マスク着用の対応について

自家用自動車を用いて、有償で高齢者や障害者の送迎を行うには?

高齢者・障害者に対する自家用自動車を用いた有償送迎サービスのはじめ方

日本国内では、条件付きではあるものの、自家用自動車を用いて有償でタクシーのような送迎業務を行うことができるようになっています。

自家用自動車とは、白色もしくは黄色のナンバープレートの自動車(軽自動車・普通自動車等)を指します。そして、自家用自動車を用いて有償で送迎輸送(これを、有償運送といいます)を行う場合には、基本的に2種免許の取得は不要です。これだけ聞くと、とても魅力的なように感じますね。現状、2種免許を取得していない方が、新たに免許を取得するとなると時間的・費用面でのコスト等が必ず発生するからです。

これらの、自家用自動車を用いた有償運送(主に人を送迎輸送するもの)を、以下に分類してみました。

福祉有償運送実施事業者:市区町村(自治体)および、NPO法人・社会福祉法人等の非営利法人・団体
利用対象者:介護を必要とする高齢者・障害者など
※他の有償運送とは異なり、利用対象者の名簿管理(会員管理)が必要。利用者は、サービスを利用するためには会員登録が必要。
交通空白地有償運送実施事業者:市区町村(自治体)および、NPO法人・社会福祉法人等の非営利法人・団体
利用対象者:地域に在住する住民・観光旅客など、その地域の来訪者(健常者を含む)
訪問介護員等による有償運送実施事業者:訪問介護・居宅介護事業者(営利法人もしくは非営利法人)
利用対象者:訪問介護・居宅介護サービスの利用者(高齢者・障害者)
通学通園に係る有償運送実施事業者:幼稚園、保育所、小学校、中学校、盲学校、聾学校又は養護学校
利用対象者:上記学校等に通う幼児、児童又は生徒
災害のため緊急を要するとき

上記いずれかの中で、介護・障害福祉サービスを提供している事業者が、自家用自動車を用いて有償運送を行う場合には、現実的には以下の選択肢となります。

  • 福祉有償運送(79条登録)
  • 訪問介護員等による有償運送(78条許可)

NPO法人・社会福祉法人等の非営利法人・団体の場合には福祉有償運送もしくは訪問介護員等による有償運送、営利法人(株式会社・有限会社・合同会社・合資会社等)の場合には訪問介護員等による有償運送といった選択肢になります。

ちょっとした注意点

よく「自家用有償旅客運送」という言葉が出てきますが、この自家用有償旅客運送というキーワードに対応するものは、正しくは上記のうち福祉有償運送・交通空白地有償運送の2種類だけが当てはまります。

時々、他の有償運送についても「自家用有償旅客運送」と表記しているホームページ等がありますが、これは正しい表現ではありません。

他の類型も含めて、国土交通省が「高齢者の移動手段確保のための制度と地域の取組モデルについて」整理・解説したパンフレットを公表しました。よろしければご覧ください。

目次

有償運送の許可や登録が不要な場合

主に以下の場合には、有償運送の許可や登録が不要とされています。

  • 対価・報酬を得ずに送迎を行う場合(他の名目での報酬もまったく得ていない場合)
  • 実際の運送に要したガソリン代・有料道路代・駐車料金のみ実費を得て(または割り勘)送迎を行う場合
  • 利用者が自発的な(好意での)謝礼を支払う場合(運転手や仲介者等が謝礼の支払を求めない場合)
  • 有償ボランティアによる家事・身辺援助等のサービスに送迎が含まれる場合
  • 自己の施設の利用を目的とする送迎を行い、送迎の有無によって対価・報酬に差が発生しない場合
    • たとえば、入浴施設・スポーツジム・スイミングスクール・ホテルなどの無料送迎
  • 施設介護事業者(デイサービス、ショートステイの事業者を含む)が、要介護者の送迎輸送を行う場合(減算を行う場合も含まれる)
  • 障害福祉サービス事業者等が行う送迎輸送で、市町村が従来の送迎加算の範囲内の額(利用者負担分を含む)を給付する場合
  • 利用者自身の所有する自動車を使用して送迎を行う場合(自動車を用意せず、運転役務のみを提供する場合)

上記のサービスは、運転する者が運転免許証を持っていれば、送迎車を運転することが可能です。

訪問介護・居宅介護等の事業所が、通院等乗降介助などの介護報酬の請求を行う場合、運送の許可や登録が必要!

訪問介護・居宅介護等の事業所に所属している運転者が、自らの自動車を用いて送迎輸送を行うことに伴い、通院等乗降介助・身体介護中心型等の介護報酬(介護給付費)の請求を行う場合には、必ず「有償運送」などの許可や登録が必要となります。

  • 福祉有償運送(79条登録)
    • もしくは、交通空白地有償運送(79条登録)
  • 訪問介護員等による有償運送(78条許可)
    • もしくは、介護タクシー(福祉輸送事業限定・4条許可)や特定旅客自動車運送(43条許可)

上記のいずれかの許可または登録が必要です。

送迎業務を行わず、単に利用者の居宅内でサービス提供(業務)を行う場合のみであれば、有償運送等の許可や登録は不要ですが、自動車を用いて送迎輸送を行い、介護報酬の請求を行う場合には有償運送の許可や登録等が必要になってしまいます。

介護保険の訪問介護や、障害者総合支援法に基づく各種サービス

有償送迎にかかわる、介護保険上の訪問介護(要介護者対象)や、市町村事業の介護予防・日常生活支援総合事業(要支援者や基本チェックリスト該当者が対象)、障害者総合支援法に基づく居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護・移動支援との関係について、以下の記事でまとめました。

福祉有償運送・訪問介護員等による有償運送を始めるには、それぞれハードルがある

福祉有償運送や、訪問介護員等による有償運送を始めるには、それぞれ一定のハードルがあります。詳しく紹介します。

福祉有償運送のハードル(交通空白地有償運送も同様)

市町村または都道府県等が主宰する、地域公共交通会議等(地域公共交通会議、協議会、運営協議会)を開催し、これらの場においてタクシー等の公共交通機関によって移動制約者に対する十分な輸送サービスが確保されていないと認められ、その必要性について十分な協議が調う必要があります。

地域公共交通会議等で協議が調った後に、運輸支局等で実施団体の登録を行います。

上記の条件は、福祉有償運送はもちろん、交通空白地有償運送も同様です。

福祉有償運送・交通空白地有償運送では、白ナンバー車での保険外サービスでの(自費による)送迎輸送が可能

福祉有償運送や、交通空白地有償運送では、自家用自動車(白ナンバーもしくは黄色ナンバー車)を用いて、保険外サービスとしての(いわゆる、利用者の支払いが自費による)送迎輸送を行うことが可能です。

白ナンバー車で保険外サービスでの(自費による)さまざまな目的地への送迎輸送が行える、唯一の選択肢といっても過言ではありません。

当社ブログに、福祉有償運送・交通空白地有償運送の登録の流れなどの解説記事がございます。

訪問介護員等による有償運送のハードル

訪問介護もしくは居宅介護等の事業所指定だけではなく、事前に必ず介護タクシー(福祉輸送事業限定・4条許可)または特定旅客自動車運送(43条許可)の許可の取得が必要になります。

これらの自動車は、緑ナンバーもしくは黒ナンバー車となります。運転手も、2種免許所持者が必要となります。

介護タクシーまたは特定旅客自動車運送の許可を取得した後に、訪問介護員等による有償運送の許可申請を行います。

訪問介護員等による有償運送では、保険外サービスの提供(送迎輸送)が行えない

保険外サービスとしての(いわゆる、利用者の支払いが自費による)送迎輸送を行う場合には、介護タクシー(福祉輸送事業限定・4条許可)を用いて行います。つまり、2種免許の運転手が、緑ナンバーもしくは黒ナンバーの自動車を用いて送迎輸送を行います。

自家用自動車を用いた訪問介護員等による有償運送では、ケアプランの範囲内や介護報酬の発生する範囲内での送迎輸送(つまり、通院等乗降介助や身体介護中心型などの介護報酬(介護給付費)が伴う送迎)に限定されます。

通院等乗降介助・身体介護中心型等の送迎輸送は、介護タクシーでも行うことができる

通院等乗降介助・身体介護中心型等の介護報酬(介護給付費)が伴う送迎輸送は、自家用自動車だけが行うことができるものではありません。事業用自動車(緑ナンバーもしくは黒ナンバー車)である、介護タクシー(福祉輸送事業限定・4条許可)でも行うことが可能です。

これは、一般的に「介護保険タクシー」と言われるものです。

まとめると、介護タクシー(福祉輸送事業限定・4条許可)の許可を取得している訪問介護・居宅介護等の事業者は、介護タクシーでのみ自費による送迎を行うことができ、介護報酬(介護給付費)を伴う送迎は、介護タクシーおよび訪問介護員等による有償運送で行うことが可能です。

ただし、介護タクシー・訪問介護員等による有償運送ともに、それぞれ許可を取得する必要があります。

当社ブログに、介護タクシー・訪問介護員等による有償運送の許可取得の流れなどの解説記事がございます。

通院等乗降介助(介護保険タクシーやぶら下がり許可)や、移動支援などについては、以下の記事にまとめました。

自家用自動車による有償運送にかかわるQ&A

自家用自動車による有償運送について、様々な疑問について回答いたします。

自家用自動車を用いて有償運送を行うには、どの資格が必要ですか?
  • 福祉有償運送(79条登録)
  • 交通空白地有償運送(79条登録)
  • 訪問介護員等による有償運送(78条許可)

を実施するためには、福祉有償運送運転者講習の修了等が必要になります。運転者が取得すべき資格等の詳細は、こちらの記事をご確認ください。

通学通園に係る有償運送の場合においては、資格取得(講習修了)は不要です。

セダン等運転者講習が必要な場合は?

福祉有償運送で、福祉車両以外の自動車を用いて送迎輸送を行う場合のみ必要になります。運転者が取得すべき資格等の詳細は、こちらの記事をご確認ください。

ケア輸送サービス従事者研修修了者、介護福祉士、訪問介護員、居宅介護従事者の場合には、セダン等運転者講習の受講が免除となります。

運転手は全員、資格が必要ですか?

運転手全員、福祉有償運送運転者講習の修了等が必要になります。運転者が取得すべき資格等の詳細は、こちらの記事をご確認ください。

無許可で(許可や登録を行わずに)有償運送を行うとどうなる?

無許可で有償運送を行うと、刑事責任を負う場合があります。その具体的な事例は以下の通りです。

無許可で有料スクールバス運行、学校法人など書類送検/横浜

無許可で有料のスクールバスを運行したとして、鶴見署は8日、道路運送法違反(有償運送)の疑いで、学校法人「ホライゾン学園」と、担当理事の男(67)を書類送検した。

カナロコ(神奈川新聞)の記事より引用(2010年7月9日の記事)
送迎代として請求せずに、あくまで買い物付き添い代として請求した場合はどうなる?

名目は問わず、実質的に送迎を伴う行為で金銭を得ることが反復・継続する場合には、白タク行為に該当します。

名目ではなく、実質的に送迎の対価として金銭を得て、その行為が反復継続するのであれば、白タク行為となります。

弁護士ドットコムより引用

他にも、「買い物付き添い代」としての名目ではなく、「写真撮影代」としてトゥクトゥクで送迎を行った場合に、白タク容疑がかけられている事案もあります。

男は県警の調べに「運賃ではなく写真撮影代」などと説明したが、15分3千円などの料金をとり、客を乗車させてホテルや駅に移動していることなどから、白タク行為にあたると判断した。

朝日新聞デジタルより引用
どこまでが白タク行為(有償運送)に該当しない?

具体的には、ガソリン代・有料道路代・駐車料金の合計金額(これを特定費用という)までは、白タク行為(有償運送)に該当しないとされています。

また、自己の施設の利用を目的とする送迎を行う場合、送迎の有無によって対価・報酬に差が発生しない場合には、自家輸送(無償運送)となり、許可や登録は不要です。

通所・施設介護系の送迎の場合には、以下の送迎加算や減算がありますが、

デイサービス(介護)利用者に対して、居宅と事業所間の送迎を行わない場合、送迎減算(片道につき-47単位)
日中・短期サービス等(障害)送迎加算(Ⅰ)21単位もしくは、送迎加算(Ⅱ)10単位など

これについては、平成18年9月に国土交通省・厚生労働省の連名で出された「介護輸送に係る法的取扱いについて」によると、当分の間「自家輸送」として扱うことが明記されています。

今行っている送迎が有償運送に該当するかどうか不安です。

お近くの運輸支局にお尋ねください。

福祉有償運送運転者講習・セダン等運転者講習を受講したい方は

福祉有償運送運転者講習・セダン等運転者講習の受講が必要な方は、以下のページからお申込みください。ご希望日がない場合には、出張講習にも対応しています。

自家用自動車による有償運送には、貨物輸送タイプもある

自家用自動車による有償運送は、人の送迎輸送を行うだけではなく、貨物輸送の分野でも活躍しています。たとえば、以下のものがあります。

  • 事故車等の排除業務に係る有償運送許可(自家用車積載車による有償運送許可)
  • 繁忙期有償運送(貨物自動車運送事業者による、繁忙期等の有償運送許可)

自家用自動車による有償運送は限定的な用途で、対応範囲が幅広いのは介護タクシー

自家用自動車による有償運送には、実施可能な法人が限られたり、細かい部分で輸送条件が限られたりと、様々な制限があります。送迎の対象者を高齢者や障害者に限れば、もっとも制限がないのは事業用自動車(緑ナンバーもしくは黒ナンバー車)の介護タクシー(福祉輸送事業限定・4条許可)です。2種免許をお持ちの方であれば、介護タクシーが現実的な選択肢となります。

健常者を含む送迎輸送を行う場合には、交通空白地有償運送だが実施可能な地域が限定的

まったく病気をしていない健常者を含む送迎を行う場合には、自家用自動車を用いたものは交通空白地有償運送となりますが、実施可能なエリア(地域)は限られます。具体的には、バスやタクシーなどの公共交通機関で住民などに対する移動手段が確保できないと認められる地域に限られます。

交通空白地有償運送では、住民などに対する日常的な移動手段としてはもちろんですが、観光利用を目的とした送迎輸送に活用することも可能です。ただし、観光利用を目的とした送迎輸送を行う場合には、その利用目的を含めて地域公共交通会議等で協議が調っていることが条件のようです。

もっとも制限がないのは、緑ナンバーのバスやタクシーの開業

その制限をなくすためには、事業用自動車(緑ナンバー)のタクシーやバスの開業が選択肢となりますが、そのハードルは相当高くなります。

自家用自動車による有償運送の登録・許可の要件や手順について調べる方法

自家用自動車による有償運送(送迎輸送を行うもの)の登録・許可の要件や手順などについて、詳細な記事は当社のブログで解説しています。

それぞれ、上記リンクよりお読みください。

【最後に】この記事を読んでいただいたみなさまへ

この記事を読んでいただいて、みなさまの現場でお役立ていただければ大変うれしく思います。

また、記事をお読みいただいた方から、時折当社へ「福祉有償運送」や「訪問介護員等による有償運送(ぶら下がり許可)」などの許認可申請に関するご質問やご要望をいただくことがございます。しかしながら、ある程度以上のお話しになった場合には、該当する許認可申請などについては、必ず管轄の行政機関へ直接お問い合わせいただくようにご案内させていただくか、もしくは行政書士へお繋ぎをするなどの対応させていただく場合がございますのでご了承ください。

スタッフより

当社では行政書士が不在のため、一定の内容以上の許認可申請にかかわるお話しになった場合については、上記の通り回答できない場合がございますので予めご容赦いただくますようお願い申し上げます。

この記事を読んで「役に立った!」と思ったら、ぜひSNSなどでシェアしてくださいね
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次