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介護保険と介護予防、障害福祉サービスの通院等乗降介助・移動支援などの報酬と送迎との関係

訪問介護事業所などが介護保険(通院等乗降介助など)や障害者の個別給付など(通院等乗降介助または移動支援など)の報酬を算定しながら、要介護者・障害者等の方の外出支援を行う際には、従来は事業所等が用意した車での送迎を行うことはできず(従来のガイドラインでは、報酬の部分が法的にひっかかり、無許可で送迎を行うと有償送迎行為(つまり、白タク行為)に該当するため)、原則として公共交通機関などを利用するか、もしくは送迎行う場合には介護タクシーまたは有償運送の許可や登録申請を行うことが必須とされていました。

しかし、2024年3月1日には国土交通省から新ガイドラインが発表され、2024年3月29日には厚生労働省から事務連絡が発表され、運送中に反対給付(運転手の運転中の人件費を含むもの)や介護報酬が発生しなければ有償運送とはならず、利用者を送迎する場合に道路運送法上の許可や登録は不要となりました。

乗車中も介護報酬や反対給付(運転手の運転中の人件費を含むもの)を利用者に請求する場合には、本ホームページで案内している道路運送法上の許可や登録を受けると、介護保険や障害者の個別給付などを算定しながら、送迎を行うことができるようになります。

この記事では、公的な報酬(介護保険や障害者の個別給付等)と送迎との関係についてまとめました。

目次

有償送迎の種類について(運送中の反対給付を請求する場合)

利用者に運送中の反対給付を請求する場合、該当する有償送迎の種類については、公的に認められた(許可や登録が必要な)送迎となります。一例を以下に挙げます。

  • 介護タクシー(福祉輸送事業限定)
    • 今回の記事は、一般的に「介護保険タクシー」と呼ばれるものの解説となります
  • 特定旅客自動車運送
  • 自家用有償旅客運送(福祉有償運送・交通空白地有償運送)
  • 訪問介護員等による有償運送(介護タクシー・特定旅客自動車運送等のぶら下がり許可)

詳しく調べたい方は、以下の記事をお読みください。

無許可(許可又は登録不要)の場合は?(運送中の反対給付を請求しない場合)

運送中に反対給付(運転手の運転中の人件費を含むもの)や介護報酬が発生しなければ有償運送とはならず、利用者を送迎する場合に道路運送法上の許可や登録は不要です。反対給付が請求できないので、運送中のガソリン代、有料道路代、駐車料金、保険料を請求することは可能です。

従来は、道路運送法上の許可や登録を受けていない(無許可の)場合には、介護報酬の対象としないとされていました(出典:介護輸送に係る法的取扱いについて)が、その後に改定されました。

つまり、従来のこの場合は送迎のお仕事をしても(制度上できないようになっている)、無報酬ということになってしまいます。

報酬や運賃に対する基本的な考え方

有償運送の場合、報酬や運賃に関する基本的な考え方は、以下の通りです。

公的な報酬(介護保険・障害者の個別給付等)乗車前後の介助・移動、車中も含めて介助が必要な場合などに係る部分の費用。
運賃または「運送の対価」乗車中の送迎(運転業務)に係る部分の費用。

公的な報酬(介護保険・障害者の個別給付等)について

運転中は身体介護などができないので、基本的に報酬が算定できない点には注意しておきましょう。

運転中は、ハンドルを両手で握ると教習所でも教わりましたよね?したがって、運転中は手も足も出せないという考え方です。しらがって、報酬を算定できるのは、乗車前後の乗降介助などとなります。

もしくは、身体状況的にも、車中も含めて介助が必要な場合は身体介護中心型などを算定します。

埼玉県の障害児(者)生活サポート事業は、運転中にも報酬が発生

埼玉県の障害児(者)生活サポート事業については、福祉有償運送の「運送の対価」を設定する際に、生活サポートを適用した場合とそうでない場合の運賃(報酬)を設定しているようです。

生活サポート事業の詳細については、以下の記事をお読みください。

また、さいたま市のホームページ上で、さいたま市内での福祉有償運送の事業者ごとの「運送の対価」を紹介しています。そこには、生活サポートを適用した場合・適用しない場合の料金設定の実例があります。

※生活サポート事業については、実施要件として訪問介護事業所等である必要はありません。

送迎(移動)に係る運賃は、別途請求を行う

自動車での送迎(移動)に係る運賃は、別途請求を行うのが原則です。

  • 自家用有償旅客運送(福祉有償運送・交通空白地有償運送)であれば、「運送の対価」が該当します。
  • 介護タクシー(福祉輸送事業限定)や訪問介護員等による有償運送(ぶら下がり許可)であれば、タクシー運賃(ケア運賃・自動認可運賃)もしくは介護運賃(いずれも運賃申請が必要です)がそれに該当します。

乗車中以外の公的な報酬(介護保険・障害者の個別給付等)のみを請求して、運賃請求は行われない(運賃未請求)という場合は、道路運送法上の許可や登録は不要です。

※介護運賃とは、タクシー運賃(自動認可運賃など)とは別建てで設定が可能です。

介護保険上の、訪問介護事業所が行う「通院等乗降介助」

介護保険における訪問介護の(介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第2項)一形態として、通院等乗降介助で用いられます。

通院等乗降介助とは、居宅要介護者について、通院などのため、指定訪問介護事業所の訪問介護員等が自らの運転で車両への乗降介助を行い、併せて乗車前もしくは乗車後の屋内外における移動等の介助または通院先もしくは外出先での受診等の手続き、移動等の介助を行った場合、介護給付費の算定ができます。

通院等乗降介助で利用できる内容としては、「通院介助」と「外出介助」があります。

利用対象者は、要介護者となります(要支援者は対象とならない)。

通院介助

通院介助とは、医療機関の受診等の手続きを含めた、通院するための移動介助です。院内の移動等の介助も含む場合があります。

現在は、2021年4月の介護保険制度の改定により、入退院を含むように改正が行われています(詳しくは、厚生労働省による報酬改定に関する文書(PDF・新旧対照表の8ページ)をご覧ください)。

新型コロナワクチン接種のための送迎は、介護保険が適用可能

訪問介護事業所のヘルパーさんが、新型コロナワクチン接種会場への同行(支援)が可能になっています。通常通り、身体介護もしくは通院等乗降介助が算定可能です。

詳しくは、JOINT(介護のニュースサイト)の記事もしくは、厚生労働省の事務連絡(PDFファイルの問6)ご覧ください。

外出介助

介護保険上で認められる外出介助とは、日常生活を送る上で、行かないと生活に大きな支障が生じる、最低限必要性が認められる、外出をするときの介助です。前述の通院介助も、外出介助に含まれ「通院・外出介助」と呼ばれます。

外出介助の介護保険上での適用範囲は、市町村によっても異なりますが、以下の通りです。

  • ご家族へのお見舞い(頻繁でない場合に限る)
  • 日用品の買い物(必需品等に限る、生活が成り立たない場合などに限る)
  • 銀行での手続き
  • 官公署(国、都道府県及び市町村の機関など)への届出(原則として郵送できないものに限る)
  • 選挙の投票
  • 通所介護事業所や介護保険施設の見学

介護保険上の外出介助として認められないもの

たとえば散髪お墓参り、医師の指示がない整骨院・鍼灸・マッサージなど(医療保険の対象外のもの)、冠婚葬祭への出席、観光・旅行、通勤・通学、日用品以外の買い物などは、介護保険上での利用対象外になります。

2021年4月、介護保険上での通院・外出介助で病院間などの付き添いも可能に

厚生労働省は、2021年4月の介護保険制度改定で、訪問介護の通院等乗降介助のルールを緩和しました。

利用者の住まいが出発地ないしは到着地となることを前提としており、病院から病院への移送・デイサービスから病院への移送などはこれまで通院等乗降介助の算定対象に含まれませんでしたが、利便性を高める観点から改善が行われました。

詳しくは、シルバー産業新聞のサイトや、厚生労働省による報酬改定に関する文書(PDF・新旧対照表の8ページ)をご覧ください。

「通院等乗降介助」と「身体介護中心型」との適用関係について

通院等乗降介助と身体介護中心型との使い分けは、以下の通りです。

通院等乗降介助あくまで、乗車前後の介助を必要とする場合。ヘルパー自身が運転する自動車で移動するため、移動中の介助が不要な場合を指します。
報酬は97単位(従来は99単位)となっています。
身体介護中心型通院等乗降介助だけでは十分ではない場合。たとえば、身体状況的にも車中を含めて介助が必要な場合、例外的に認められた院内介助、外出前後の30分以上の身体介護などを指します。
報酬は20分未満が163単位、20分以上30分未満が244単位、30分以上1時間未満が387単位(従来は20分未満が167単位、20分以上30分未満が250単位、30分以上1時間未満が396単位)となっています。

要支援者などへの対応は、市町村事業の介護予防・日常生活支援総合事業

2015年4月に、要支援者を対象とする予防給付の一部が、市町村事業である地域支援事業の「介護予防・日常生活支援総合事業」に移行されました。市町村事業のため、実施方法や補助金額はもちろん、実施するかどうかも含めて市町村の判断に委ねられています。

当社にも時々、「要介護者に対する部分はわかったのですが、要支援者に対する(公的な報酬を得て行う)通院送迎は?」というご質問をいただきます。それが、この総合事業の一類型である「介護予防・生活支援サービス事業」の中に含まれる

  • 訪問型サービスB(住民主体による支援)
  • 訪問型サービスD(移動支援)

となります。対象者は、要支援者や基本チェックリスト該当者となります。

このうち、訪問型サービスD(移動支援)の内容は、通所等サービスへの送迎・通院等の送迎前後の付き添い支援とされています。

訪問介護員等による有償運送(ぶら下がり許可)では、市町村事業である介護予防・日常生活支援総合事業上の位置づけはありません。

障害者総合支援法に基づくサービスとしての運送

障害者総合支援法に基づく、障害福祉サービスの居宅介護(ホームヘルプ)の事業者が行う送迎を指します。適用される給付の種類としては、居宅介護・行動援護・同行援護・重度訪問介護があります。

障害福祉サービス(居宅介護)上での、通院等乗降介助の適用範囲

障害福祉サービス(居宅介護)上での、通院等乗降介助の適用範囲(利用目的)は、主に「通院等介助」と同じです。介護保険とは異なります。

  • 病院等に通院する場合(入退院を含む)
  • 官公署(国、都道府県及び市町村の機関など)または指定相談支援事業所への公的手続き、または障害福祉サービス利用の相談のために訪れる場合
  • 相談支援専門員との相談の結果、見学のために紹介された指定障害福祉サービス事業所を訪れる場合

報酬は101単位となっています。

2021年4月、指定障害福祉サービスの通院等介助の規定が変更

厚生労働省は、指定障害福祉サービスの通院等介助(通院等乗降介助も同様)において、2021年4月に報酬改定・制度改正を行いました。

具体的には、病院への通院等について入退院を含むように変更が行われています(詳しくは、厚生労働省による報酬改定に関する文書(PDF・新旧対照表の40ページ)をご覧ください)。

重度訪問介護や同行援護・行動援護、移動支援などの場合

市町村事業である、地域生活支援事業に基づく「移動支援」についても、自動車を使用した送迎について国の事業である個別給付と同様の取り扱いなされている市町村もあります。

重度訪問介護や同行援護・行動援護、移動支援の場合、

  • 同行援護や行動援護・移動支援の場合、買い物同行などの社会的外出や、余暇活動を行うことが可能
    • これは、居宅介護の通院等介助ではほとんど認められない
  • 重度訪問介護は、社会的外出・通院・余暇活動などすべてを含み支援が可能
  • 移動支援は、「車両移送型支援」と呼ばれるもので、公共交通機関を利用することが困難で、自動車への乗降およびその前後に介助等を必要とする障害児(者)に対して、道路運送法に基づく許可や登録を有している事業所およびヘルパーにより提供される、自動車を用いた支援

2021年4月、重度訪問介護で移動介護緊急時支援加算という報酬が追加

重度訪問介護において送迎などを行うときには、予め道路運送法上の許可や登録を行った上で「移動介護加算」を算定することができます。

2021年4月以降、常時介護が必要な方を送迎する際に、自動車を駐停車などを行って適時適切な支援(たとえば、喀痰吸引などの医療的ケアや体位調整等の支援など)を行った際に、新たに「移動介護緊急時支援加算」というものが算定できるようになりました。緊急性や安全管理などを評価するものです。

報酬は1日240単位となっています。

運転中の時間は、報酬の算定対象にはなりませんが、駐停車などを行って支援に要した場合は、時間問わず算定が可能となっています。また、ヘルパーが2人いる場合でも報酬は同じ1日240単位です(詳しくは、厚生労働省による報酬改定等に関するQ&A(PDF・11~12ページ)をご覧ください)。

重度訪問介護の移動介護加算について

1時間未満100単位
1時間~1時間30分未満125単位
1時間30分~2時間未満150単位
2時間~2時間30分未満175単位
2時間30分~3時間未満200単位
3時間以上250単位
  • 2人の重度訪問介護従業者による支援…加算を1.8倍(従来は2倍)
  • 熟練従事者が同行して支援を行う場合…加算を1.8倍(従来は1.7倍)

障害福祉サービスの各外出支援でも、新型コロナワクチン接種の支援が可能

上記の居宅介護(通院等乗降介助)、同行援護、行動援護、重度訪問介護サービス(個別給付)を適用しながら、訪問介護事業所のヘルパーさんが、新型コロナワクチン接種会場への同行(支援)が可能になっています。

詳細は、厚生労働省の事務連絡(PDFファイルの問6)ご覧ください。

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