埼玉県の障がい児(者)生活サポート事業とは、障がい児や障がい者とそのご家族の生活を支援するため、市町村に登録した事業者・団体が、日中の一時預かり(レスパイトケア)・派遣による介護サービス・宿泊・外出援助・車による送迎などのサービス行う事業です。各市町村により詳細な条件が異なる場合があります。詳しくは、各市町村の担当窓口へお問い合わせください。
この生活サポート事業は、埼玉県独自の制度となっており、他にも川崎市や新潟市などで同様の名称の事業はありますが、埼玉県のものとは異なるようです。本記事では、その埼玉県独自の制度について解説いたします。
他県で類似の事業の実施やサービスの利用を検討したい場合
利用目的や利用したい要望を伝え、各市町村の担当窓口へお問い合わせください。
他の都道府県の場合(生活サポート事業を行っていない地域)においては、市町村事業である障がい者または障がい児のための地域生活支援事業の移動支援などを利用して、同様のサービスを受けることが可能な場合があります(行っていない地域や、サービス内容が異なる地域もあるようです)。
埼玉県の生活サポート事業とは制度や受けられるサービス内容・補助金額、サービス利用対象者などが異なる場合がありますので、詳しくは各自治体へお尋ねください。
埼玉県の生活サポート事業の特徴とサービス内容
埼玉県の生活サポート事業については、以下の特徴があります。
- 法定の福祉サービス(国が主体となり実施しているサービス)では対応できない隙間を埋める事業
- 複合的なサービスの利用が可能
- 車を使っての移動支援が可能
サービスの種類は、一時預かり、介護人の派遣、宿泊※、送迎、外出援助などといった事業が可能です。事業所により、実施していないサービス内容があります。障がい福祉サービスでは実施できず、かつ上記の事業に分類できないサービスの実施も可能な場合もあります。
たとえば、特別支援学校、障がい福祉サービス事業所への送り迎えなどを実施するために車を使った送迎を行うためには、サービスを実施する事業者が福祉有償運送の登録が必要です。
※宿泊については、原則として認めていない(障がい福祉サービスの「短期入所」を利用すること)市町村もあるようです(やむを得ない場合を除く)。
生活サポート事業の利用対象(利用内容)は、あくまで一時利用に限られる
生活サポート事業の根幹部分ではあるのですが、利用対象としているサービス内容は、あくまで一時利用のものに限られます。これについては、小鹿野町の生活サポート事業実施要項がとても詳しいのですが(詳細は、市町村によっても異なる場合があります)、
- 一時預かり
- 介護者の一時派遣
といった表記があることから、特に一時性について強調されていることがわかります。
ほかにも、個別(1対1)でサービス提供を行っていないときや、団体が行うレクリエーション行事の場合、施設入所者に対しサービス提供を行った場合(一時帰省時を除く)などはサービス適用対象外です。
また、他の障がい福祉サービスや地域生活支援事業(日中一時支援や移動支援など)、介護保険が利用できる場合は、生活サポート事業よりもそれらが優先されます。
送迎・外出においての、生活サポート事業としての考え方
基本的に、送迎および外出援助で可能となるものは、社会生活上必要不可欠な外出(特別支援学校や作業所等への一時的な送迎を含む)・余暇活動などの社会参加のための外出利用です。この考え方から、一般的に認めていないものの一例は以下の通りです。
- 収入を得ることを目的とした通勤、営業活動
- 通年(一年を通しての外出)または長期(3ヶ月以上継続するもの)にわたる外出
- 特別支援学校への通学については、基本的に認められている場合が多いようですが、上記の通年または長期ではない部分に留意が必要です
- 通院については、定期的な通院計画を持たないものであることが必要です
- 上記については、介助を行っている保護者が怪我や疾病等の理由により、通年または長期利用を認める場合があります
- 社会通念上、生活サポート事業を適用することが適当ではない場合(政治・宗教・賭博・風俗・事業者自らが企画するイベントへの外出など)
上記の利用については、基本的に認められないのでご注意ください。詳しくは市町村へお問い合わせください。
サービスを提供する事業者(法人・団体)について
埼玉県の生活サポート事業のサービスを提供する事業者(法人・団体)については、次のいずれかに該当する事業者です(さいたま市の場合)。
- 社会福祉法人
- 特定非営利活動法人
- その他、市長が適当と認める営利を目的としない法人
- 障がい者福祉の増進を目的とする団体で、市長が適当と認める営利を目的としない法人格を有しない団体
生活サポート事業自体は、法人格を有しない団体も可能な場合があるようですが、福祉有償運送自体が法人格を有しない場合は基本的に実施が難しいため、生活サポート側で市長が適当と認める場合には、最低でも一般社団法人などの設立が必要となると考えられます。設立前に、必ず市町村の担当窓口へお問い合わせください。
たとえば、一般社団法人を設立するには、社員が2名・理事が1名以上いれば設立可能で、社員と理事は同一でも構わないとされています。
また、特定非営利活動法人と一般社団法人などの違いについては、たとえば内閣府のホームページなどを見たり、周りの方(すでに法人の設立経験のある方)や専門家などの意見を聞いたりして、設立前の段階で十分に検討していきましょう。得られる補助制度や各種優遇制度なども含めて正しく理解しておくと、持続可能な形での運営がしやすい場合があります。
なお、社会福祉協議会や社会福祉事業団は、生活サポート事業の事業者から除外します。
生活サポート事業で送迎を行うには、なぜ福祉有償運送の登録が必要なのか?
車での送迎を行うことで、後に解説する本人負担分や補助金、その他の費用(燃料費や迎車回送料金など)を請求しようとする場合には、有償での送迎(タクシー業務)に該当するため、無許可で生活サポート事業の送迎業務を行うと、白タク行為となり違法行為となります。
したがって、NPO法人等の非営利法人・団体が生活サポート事業において送迎輸送を行おうとする場合、併せて福祉有償運送の登録が必要になります。この場合には、送迎を行おうとする必要性が認められることが必要であり、予め利用希望者(会員登録したい者)がいることが必要になります(後から、送迎を希望する会員を追加することも可能です)。
送迎を行うことを希望する事業者向けの資料として、以下の記事をご参考ください。
法人・団体で福祉有償運送の登録を行おうとする場合には、以下の記事をお読みください。
また、福祉有償運送を行う場合、運転者が全員「福祉有償運送運転者講習・セダン等運転者講習」の受講が必要な場合があります。必要かどうかについては以下の記事をお読みください。
福祉有償運送運転者講習・セダン等運転者講習のお申込みが必要な方は、以下のページからお申込みください。ご希望日がない場合には、出張講習にも対応しています。
送迎など、ひとつのサービスに偏った事業は実施できない
生活サポート事業のサービス提供は、利用者の日常生活に合わせてサービスを柔軟に組み合わせて実施するものです。このため、ひとつのサービスに偏った事業を実施することは基本的にできないとされています。
また、指定障がい福祉サービス事業所や社会福祉施設などが、同一の建物内で生活サポート施設本来の目的を損なうおそれがあったり、それぞれの事業の透明性を確保する観点から好ましくないため、原則として認められていませんが、諸般の事情で同一の建物内でサービスを実施する場合には、それぞれの事業ごとに人員配置基準などの指定要件を満たすこと(専従職員の兼務は認められない)、職員の勤務状況・会計などのそれぞれの事業の管理を適切に行うこと、事業ごとに部屋を分けるなどの対応が必要です。
サービス提供事業者が受けられる補助金額
埼玉県の基準単価は、1時間当たり最高2,850円と設定されています。具体的には、この単価が事業者としての主たる収入源となります。また、他に発生した費用(送迎の場合、年会費や迎車回送料など)を利用者本人へ請求する場合があります。事業者・団体によっても異なります。
生活サポート事業自体の補助金額・利用者本人への請求金額については、基本的に介助者がサービスの利用者(利用対象者)に個別に付き添い(1対1対応)サービスを実施する時間数のみ計上します。
1時間あたりの補助金総額の1/3(950円)を県が、1/3(950円)を市町村、1/3(950円)を利用者(利用料金という形)で負担します。利用者の負担金額は、収入状況や各自治体によっても異なります。
具体的には、たとえば障がい者(18歳以上)の場合には1時間あたり950円を限度として事業者・団体が定めた額とし、障がい児(18歳未満)の場合には世帯収入に応じて1時間あたり0円~950円といった形があります。利用料金が一律といった場合もあったり、市町村が利用者本人負担分の一部を負担している場合もあります。
生活サポート事業の自動車税(種別割)の減免について
リース車ではない場合、生活サポート事業のために直接使用する自動車については、申請することにより自動車税(種別割)の全額が減免となります。生活サポート事業の実施時間数が1,000時間を超えた場合1台減免することができ、以降2,000時間ごとに1台追加で減免を受けることができます。時間数は、前年度の実績によります。
詳しくは、埼玉県庁の記事をご覧ください。
送迎サービスを実施して、上記以外の別途費用を請求する場合の注意点
送迎サービスを実施して、上記以外の別途費用を請求する場合、事業者としては「運送以外の対価」として福祉有償運送の各協議会等で各種費用の請求について事前に承認を得る必要があります。
一例として、以下の料金設定があります。
- 迎車回送料金
- 待機料金(利用者に付き添っていない時間帯に待機が発生する場合)
- 年会費
複数の公費負担を併用してサービス実施する場合
上記のほか、市町村によっては乗車中を生活サポート事業として、乗車していないときは移動支援事業として分けている場合があります。ただ、市町村によっては乗車中とそれ以外に分けて2つの制度利用を認めない場合もあるようです。
2名以上でサービスを提供した場合
たとえば、運転者と介助者といった場合や介助者が2名といった場合など、利用者の安全確保の観点から2名いることが望ましいと考えられる場合があります。その場合でも、補助金が増額されることはありません。
また、運転者が介助者を兼ねる(1名のみで運転する)といったことも、利用者の特性をよく理解した上で、十分に利用者の安全を確保できる場合には問題ないとされています。
生活サポート事業のサービスを受けたい方へ
埼玉県の障がい児(者)生活サポート事業を受けたい方は、サービス提供を受けられる利用対象者、時間数や負担金額について以下をご参照ください。
ただし、利用目的によっては生活サポート事業の利用が認めていない場合がございますので、一般的に認められている利用目的についてはこちらをご参照いただき、認めていない事項については他の障がい福祉サービスや地域生活支援事業などで利用できるかどうかも併せてご確認ください(基本的に、市町村が問い合わせ窓口です)。
サービスの利用対象者
- 身体障がい者手帳、療育手帳、精神障がい者保健福祉手帳の交付を受けている方
- 知的障がい者更生相談所又は児童相談所において知的障がいと判定された方
- 医師により発達に障がいがあると診断された方
※市町村によって条件が異なる場合があります。
福祉有償運送を利用するためには、福祉有償運送を行う事業者・団体に会員登録することが必要です(事業者は利用者の名簿管理が必要です)。各団体により、利用対象者・利用方法・迎車回送料金(サービス提供時間外に発生)の有無など、別途かかる費用などが異なります。
サービスの利用時間
1人あたり年間150時間まで※
※年度途中からの利用は、日割りまたは月割りで利用時間が短縮されます。
サービス利用者の負担金額
1時間あたり0円~950円※
※ただし、事業者・団体により別途で迎車回送料・燃料費等を別途必要とする場合があります。市町村によっても、自己負担額が変わる場合があります。
対象外となるもの(別途費用が発生する場合があるもの)
本サービスは、あくまでも実際に利用者に個別に付き添い(1対1対応)サービスを提供している時間が請求(補助)対象となります。したがって、送迎サービスを利用している場合
- 迎車回送料金
- 待機料金(利用者に付き添っていない時間帯に待機が発生する場合)
- 年会費
などが発生する場合には、別途利用者の自己負担が増える場合があります。
上記のほか、市町村や事業所によっては乗車中を生活サポート事業として、乗車していないときは移動支援事業としてのサービス実施となり、請求金額が異なる場合があります。市町村によっては、このようなサービスの実施を認めていない場合があります。
【最後に】この記事を読んでいただいたみなさまへ
この記事を読んでいただいて、みなさまの現場でお役立ていただければ大変うれしく思います。
また、記事をお読みいただいた方から、時折当社へ「福祉有償運送」や「訪問介護員等による有償運送(ぶら下がり許可)」などの許認可申請に関するご質問やご要望をいただくことがございます。しかしながら、ある程度以上のお話しになった場合には、該当する許認可申請などについては、必ず管轄の行政機関へ直接お問い合わせいただくようにご案内させていただくか、もしくは行政書士へお繋ぎをするなどの対応させていただく場合がございますのでご了承ください。
当社では行政書士が不在のため、一定の内容以上の許認可申請にかかわるお話しになった場合については、上記の通り回答できない場合がございますので予めご容赦いただくますようお願い申し上げます。