福祉有償運送運転者講習の修了を目指す方に、介護職と運転者のキャリアパスの全体像と、併せて取得することをおすすめする資格、および自家用自動車による有償運送の管理者向けの講習について解説します。
この記事を読むと、
- 運転者講習(認定講習)と併せてどんな資格を取得すると良いのか?
- 運行管理者・運行管理の責任者はどこで運行管理者一般講習(旅客)を受講すれば良いのか?(安全運転管理者であれば受講すべきタイミングで通知が届くが、運行管理者一般講習については通知は届かない)
という疑問が解消します。
キャリアパスの全体像
以下の通りに、介護職としてのキャリアパスを見る機会はとても多いと思います。
介護職のキャリアパス
初めは誰しもが未経験からのスタートです。人によっては入職前に資格を取得している場合もありますし、資格を持っていない職員も多いです。介護業界では資格がなく働ける業種もあります。
一般的にはおおよそ3~5年の期間で、介護職員初任者研修→介護福祉士実務者研修→介護福祉士というプロセスでキャリアを積んでいきます。
そこからチームリーダーとして新人教育のマネジメントを経験したり、より深く専門的なスキルや知識を習得していきます。
資格を持っていない場合には、まずは資格取得を目指しましょう。
経験の浅い新人介護職が目指す資格です。在宅・施設で働く上で必要となる基本的な知識や技術を習得し、指示を受けながら介護業務を実践します。
訪問介護員養成研修(ヘルパー)2級修了相当の資格です。
一定の知識や技術を持つ介護職が目指す資格です。
介護福祉士実務者研修を修了すると、訪問介護のサービス提供責任者になる資格が得られます。
介護職員基礎研修または訪問介護員養成研修(ヘルパー)1級修了相当の資格ですが、介護福祉士国家試験を受験したい(受験資格を得たい)場合は、実務経験3年以上のほかに、介護職員基礎研修の場合は喀痰吸引等研修修了が必要で、訪問介護員養成研修(ヘルパー)1級の場合は実務者研修の修了が必要です。
介護福祉士養成施設や福祉系高校を経ていない場合、一般的には実務経験3年以上+介護福祉士実務者研修の修了(または実務経験3年以上+介護職員基礎研修+喀痰吸引等研修修了)で受験資格が得られます。
利用者の状態像に応じた介護や、多職種との連携等を行うための幅広い領域の知識や技術を習得し、的確な介護業務を実践します。
また、介護福祉士を配置することによって算定できる加算が設けられている場合があるので、給与アップを目指すこともできます。
運転者のキャリアパス
次に、運転者(運転職)としてのキャリアパスは以下のとおりです。
中には運転だけで良い業務もありますが、場合によっては運転だけではなく洗車等の日々の車両メンテナンスを行う場合があります。また、運転前後に伴う介助や外出支援(通院同行など)を伴う場合があります。
運転可能なサービスとして、無償運送(許可又は登録を要しない運送)のみ携わることができます。
自家用自動車による有償運送の運転業務に携わることができるようになります。認定講習(福祉有償運送運転者講習等(最短1日で修了))の修了が必要な場合と、特に必要がない場合があります。
自家用自動車による有償運送では、以下の事業用自動車のバス・タクシー(介護タクシーを含む)と比較して、行える業務内容に制限があります。それらの制限をなくしたい場合、第二種運転免許の取得を目指す道があります。
介護・障がい福祉サービスの有償運送に携わる方は、併せて介護職(主に訪問系)もしくは障がい福祉サービス(主に居宅系)の資格を取得することをおすすめします。訪問介護員等による有償運送の業務に携わることができたり、セダン等運転者講習の受講が免除(受講不要)になります。
この点において、介護職(主に訪問系)もしくは障がい福祉サービス(主に居宅系)の資格取得を行うと、以下に紹介する介護タクシー(一般乗用旅客自動車運送・福祉輸送事業限定)を行う場合にも有利に働く場合があります。
事業用自動車である緑ナンバーのタクシー・バスの運転業務に携わることができます。介護タクシー(一般乗用旅客自動車運送・福祉輸送事業限定)も同様です。
介護タクシーのセダン型(福祉車両以外の自動車)を運転する場合には、第二種運転免許のほかに、併せてこのページで紹介する介護職(主に訪問系)もしくは障がい福祉サービス(主に居宅系)の資格取得(いずれか1つ以上)が必要となります。
※福祉車両の場合には、「資格取得に努めなければならない」といった記載なので、必ずしも必須というわけではありません。
他には、大型免許・けん引免許(大型トレーラー等)を取得するなど、貨物運送といった運転者の業務もあります。中には第一種普通自動車運転免許のみで良い「貨物軽自動車運送事業(いわゆる軽貨物)」といった事業もあります。
併せて取得をおすすめする資格の一覧
以下の資格を取得すると、セダン等運転者講習の受講が免除(受講不要)になるだけではなく、公的な訪問・居宅系サービスで通院介助や外出支援(通院同行など)を行う従業者として要件を満たす資格となります。
また、訪問介護員等による有償運送の運転者として業務を行う場合は必須の資格となります。
介護職(主に訪問系)の資格
介護職員初任者研修(130時間)
介護職員初任者研修(130時間)は、資格を持っていない介護職員や、未経験で介護職を始めた人(あるいは、始めたい人)がまず取得を目指したい資格です。介護職への第一歩とも言える重要なステップです。
以前は、訪問介護員養成研修(ヘルパー)2級という名称でしたが、2013年から介護職員初任者研修に変更されました。介護職員初任者研修は、厚生労働省が認定している資格で、介護の基礎を学ぶことができます。
介護が未経験の方でも、介護全般の基礎知識を学ぶことができるカリキュラムになっているため、日々の業務に十分生かせる内容となっています。
この介護職員初任者研修を修了すると、介護保険サービスを提供する事業所で働くことが可能となります。特に、訪問介護においては訪問介護ヘルパーとして働くにあたって、必須の資格となっています。
最近では、より多くの方々に介護の基礎に触れていただくために、介護の入門的研修(1日3時間の基礎講座、または3日間21時間の入門講座)というものが広く行われていますが、入門的研修を受講しても訪問介護ヘルパーとして従事することはできませんが、入門的研修を修了している場合、介護職員初任者研修の受講時にはカリキュラムが一部免除となります。
また、訪問介護の生活援助中心型の訪問介護ヘルパーとして従事することができる資格「生活援助従業者養成研修(59時間)」を修了している場合でも、同様に介護職員初任者研修を受講する際にカリキュラムが一部免除となります。
したがって、介護職員初任者研修は、上記の入門的研修・生活援助従業者養成研修の上位資格と言えるでしょう。
また、サービス介助士(ケアフィッター)の資格と介護職員初任者研修とは、資格として特に互換性はなく、介護職員初任者研修を受講する際にカリキュラムが一部免除とはなりません。介護職員初任者研修は在宅・施設でのサービス提供や介助、サービス介助士はサービス業におけるサービス提供や介助が、資格として主な目的です。
看護師・准看護師・保健師(以下、看護師等)の方は、介護職員初任者研修を修了したものとみなされます。各都道府県の判断により、「看護師等の資格証」をもって代えることができるとされています。埼玉県では当分の間、看護師等の資格証で十分で、修了証明書は発行していません。一方で、群馬県などの場合は、県から修了証明書が発行されてから、訪問介護員として従事することが可能になります。
従来は、看護師等の方は訪問介護員養成研修(ヘルパー)1級相当とみなされておりました。しかし、介護保険法施行規則などの改正に伴い、平成25年4月1日から従来の介護職員基礎研修・訪問介護員養成研修(1~2級)が介護職員初任者研修課程に一元化することに伴い、看護師等については介護職員初任者研修修了相当に変更になっています。
セダン等運転者講習の受講免除(受講不要)には、介護職員初任者研修修了または生活援助従業者養成研修修了以上が必要となります。入門的研修やサービス介助士(ケアフィッター)では、その要件を満たしません。
また、訪問介護の生活援助中心型・身体介護中心型がどちらもサービス提供可能な訪問介護ヘルパーとして従事することができるのは、介護職員初任者研修修了以上の資格が必要となります。
看護師等の根拠:介護員養成研修の取扱細則について(平成30年3月30日一部改正)
介護福祉士実務者研修(450時間・6ヶ月)
介護福祉士実務者研修(450時間・6ヶ月)は、介護職員初任者研修よりもさらに幅広い介護分野の知識や技術の習得が求められる資格です。以前までは介護職員基礎研修または訪問介護員養成研修(ヘルパー)1級修了とされていましたが、現在の介護福祉士実務者研修はこれらが一本化されたものです。
介護福祉士実務者研修は、単に時間数が450時間といった他に、6ヶ月以上の教育期間(在籍期間)が定められています。無資格の場合ですと最短6ヶ月、介護職員初任者研修の資格を持っていると320時間(約4ヶ月)が在籍期間の目安となります。
また、介護福祉士実務者研修では医療的ケア(たん吸引・経管栄養)を学びますが、介護福祉士実務者研修を修了しただけではたん吸引・経管栄養などの医療的ケア(喀痰吸引)の業務を実施することはできません。現場での喀痰吸引を可能にするためには、基本研修と実地研修が必要です。実務者研修ではカリキュラムに喀痰吸引等研修(第1号研修・第2号研修)の基本研修(50時間)が含まれていますが、別途、実地研修を受ける必要があります。実地研修を修了したら、認定特定行為業務従事者として登録申請を行います。ただし、介護職員が喀痰吸引等の医療行為を行うことができるのは、登録特定行為事業者として登録している事業所内のみです。
喀痰吸引等研修のそれぞれの違いは以下のとおりです。
- 第1号研修:不特定多数の利用者に対し、喀痰吸引と経管栄養が可能(基本研修50時間+実地研修)
- 第2号研修:不特定多数の利用者に対し、気管カニューレ以外の喀痰吸引と経鼻以外の経管栄養が可能(基本研修50時間+実地研修)
- 第3号研修:特定の利用者に対し、喀痰吸引と経管栄養が可能(基本研修9時間+実地研修)
介護業界での上位資格でもあり、国家試験の介護福祉士の取得を目指すのであれば、介護福祉士実務者研修は取得しておきたい資格です。
介護職員初任者研修よりも上位の資格となりますが、介護職員初任者研修を取得していなくても、いきなり介護福祉士実務者研修を受講・修了することも可能ですが、資格取得まで6ヶ月と長くかかります。
介護福祉士(介護福祉士国家試験(全125問・220分))
介護福祉士は、介護職の唯一の国家資格(名称独占資格)です。
資格を持っている人だけが「介護福祉士」と名乗ることができますが、業務自体は資格を持っていない人も行うことが可能です。医師や看護師などの資格は「業務独占資格」となります。介護福祉士の資格を持っていることで、専門的知識を持っている証明にもなり、他の資格よりも平均給与が高く設定されていることも多いです。
介護福祉士養成施設や福祉系高校を経たり、実務経験3年以上+介護福祉士実務者研修の修了(または実務経験3年以上+介護職員基礎研修+喀痰吸引等研修修了)で、介護福祉士の受験資格が得られます。
また、介護福祉士の資格を取得していたとしても、介護福祉士そのものは喀痰吸引が許可される資格ではありません。介護福祉士の資格取得には、上記の実務経験ルート以外にも様々なルートがあり、必ずしも実務者研修の受講が必要ではない場合があります。実務者研修を受けずに介護福祉士になった方は、医療的ケア(喀痰吸引)の講義を受けていない場合があります。
介護福祉士の試験は1年に1回(全125問・220分)の開催です。
障がい福祉サービス(主に居宅系)の資格
居宅介護従業者養成研修等(初任者研修・基礎研修)
居宅介護従業者養成研修等には、現在は「障害者居宅介護従業者基礎研修」と「居宅介護職員初任者研修」という2種類の研修課程があります。
従来は「居宅介護従業者養成研修課程(1~3級)」というものがありましたが、その3級は基礎研修修了相当となります。2級は初任者研修相当、1級は居宅介護・重度訪問介護のサービス提供責任者の要件を満たします。
居宅介護職員初任者研修は、高齢者介護向けの介護職員初任者研修と比較して、障がい者(児)支援向けの研修となっているようですが、今現在は開催している事業所(スクール)が少ないようです。高齢者介護向けの介護職員初任者研修等は多くの事業所(スクール)で開催しています。障がい者(児)支援向けの居宅介護職員初任者研修は、高齢者介護向けの介護職員初任者研修とほとんど同じ要件を満たすので、近くにスクールや希望の開催スケジュールがある場合はそちらを受講しても良いでしょう。
同行援護従業者養成研修・一般課程(20時間)
視覚障がいのある方の社会参加の実現に欠かせないサービスのひとつとして、「ガイドヘルプサービス」というものがあり、それが障害者総合支援法に基づく同行援護としてサービスが提供されます。視覚障がい者(児)の「目の代わり」となって、外出時に同行して以下のサポート(援助)を行います。
- 移動に必要な情報提供
- 移動の援護
- 外出に必要な介護・援助(代読・代筆、移動介助、排せつ介助、食事介助など)
同行援護では、通勤通学のための外出や、その他通年・長期にわたる外出に利用することはできません。自宅の中で行う外出準備の介助もサービス対象外です。
同行援護従業者養成研修には、一般課程(20時間)と応用課程(12時間)の2種類の研修があります。同行援護の従業者として働きたい場合は一般課程のみ修了すれば良いのですが、サービス提供責任者を目指すなら一般課程と応用課程の両方の修了が必須で、かつ介護福祉士・介護福祉士実務者研修・介護職員基礎研修・訪問介護員養成研修(ヘルパー)1級・居宅介護従業者養成研修課程1級のいずれかの資格が必要です。
また、同行援護従業者養成研修の応用課程には、交通機関を利用する時の実習があり、業務スキルをさらに高めることが可能です。
行動援護従業者養成研修(24時間)
行動援護は、知的障がいや精神障がいにより、常時介助が必要な障がい者(児)が行動する際に、安全を確保するために必要な援助や移動中の介護を提供する、障害者総合支援法に基づくサービスです。
行動援護で提供されるサービスには、主に以下の3大要素があります。
- 予防的対応(できるだけ行動障害が起きないように予防する)
- 制御的対応(行動障害が起きてしまった場合、適切におさめるなど)
- 身体介護的対応(排せつ介助、食事介助、更衣の介助など)
行動援護従業者養成研修(24時間)の修了者は、通称「自閉症ガイドヘルパー」とも呼ばれます。
行動援護従業者養成研修は、ほとんどの場合「強度行動障害支援者養成研修(基礎研修(12時間)および実践研修(12時間))と資格の効力としては同等です。
強度行動障害支援者養成研修は、主に施設に従事する方を対象とした研修内容となっているのに対し、行動援護従業者養成研修は居宅系のサービスに従事する方が対象となっています。
また、行動援護従業者養成研修では、児童発達支援・放課後等デイサービスの「強度行動障害児支援加算」の対象とならないといった細かい違いがあります(強度行動障害支援者養成研修の基礎研修を修了している場合は強度行動障害児支援加算の対象)。
重度訪問介護従業者養成研修・統合管理(20.5時間)
重度訪問介護従業者養成研修(統合課程)とは、重度の肢体不自由者(障害支援区分4~6)または重度の知的障がい・精神障がいにより日常的にサポートを必要とする方に、介護サービスを提供する重度訪問介護のサービスを提供するために必要な資格です。
重度訪問介護介護従業者養成研修には基礎課程(10時間)・追加課程(10時間)・統合課程(20.5時間、基礎課程+追加課程+喀痰吸引の第3号研修を合わせたもの)・行動援護課程(12時間)の4つに分けられています。喀痰吸引等研修の第3号研修について、詳しくは上記の「介護福祉士実務者研修」の解説をお読みください。
従前には、重度訪問介護従業者養成研修に類するものとして、平成18年までに日常生活支援従事者養成研修(20時間)といった研修がありました。ただし、日常生活支援従事者養成研修修了者では、居宅介護が行うことができるのは市区町村がやむを得ないと認める場合のみです。
自家用自動車による有償運送の管理者に必要な講習
自家用自動車による有償運送を行っている事業者では、1事業所あたり5台以上(乗車定員11人以上の場合は1台)の有償運送車両(自動車)を使用している場合には、運行管理者または運行管理の責任者の選任が必要です(台数により、2名以上の選任が必要な場合があります)。
それぞれ、
- 自動車運送事業者(事業用のバス・タクシー事業者および、介護タクシー事業者、また自家用自動車の有償運送を行う旅客運送事業者)は、選任する運行管理者について、運行管理者講習の一般講習(旅客)を2年に1回受講させなければいけません。
- 自家用有償旅客運送(福祉有償運送・交通空白地有償運送)”公共ライドシェア”の特定事務所は、選任する運行管理の責任者について、運行管理者講習の一般講習(旅客)を2年に1回受講させなければいけません。
運行管理者講習の一般講習(旅客)とは、5時間の講習です。
特に、自家用有償旅客運送(福祉有償運送・交通空白地有償運送)については、今まで安全運転管理者を選任し、を1年に1回受講しなければならなりませんでしたが、今は自家用有償旅客運送(福祉有償運送・交通空白地有償運送)の事業者については安全運転管理者を解任しても良くなりました。
しかし、安全運転管理者講習であれば、講習日の概ね1ヶ月前に公安委員会から講習通知書が届き、基本的にはそれに従えばよいのですが、運行管理者一般講習(旅客)については、原則として通知が届くことはありません。したがって、自分で希望する講習を探して受講する必要があります。
その運行管理者講習(旅客の一般講習)はどこで受講すればよいのか?以下のページ(国土交通省)に一覧がありますので、以下のページから旅客(一般講習)を検索してください。