自家用自動車による有償運送の許認可や登録などについて、まとめてご覧になりたい(まとめ読みしたい)方はこのページの各リンクを辿ってお読みください。
まず、事業の方向性などを検討中で、高齢者や障害者などを有償で送迎したい場合や、日本国内の様々な自家用自動車による有償運送について知りたい方は、以下の記事をお読みください。
自治体(市町村)やNPO法人・社会福祉法人等の非営利法人・団体の方
自治体(市町村)やNPO法人・社会福祉法人等の非営利法人・団体の方は、自家用有償旅客運送(福祉有償運送または交通空白地有償運送)“公共ライドシェア”を実施することが可能です。
- 自治体(市町村)
- NPO法人(特定非営利活動法人)
- 医療法人
- 社会福祉法人
- 一般社団法人
- 一般財団法人
- (地方自治法に規定する)認可地縁団体(自治体・町内会などを法人化したもの)
- 農業協同組合
- 消費生活協同組合
- 商工会または商工会議所
- 労働者協同組合
- 営利を目的としない法人格を有しない権利能力なき社団(自治会、青年会、観光関係の協議会など)
最後の「権利能力なき社団」を認める(必ずしも法人格を求めない)ことについては、平成27年(2019年)に「地域の実情に応じた自家用有償旅客運送の見直し」というのが行われて、弾力的に実施することが可能となっています。
任意団体や個人事業主や、営利法人(株式会社・有限会社・合同会社・合資会社等)は自家用有償旅客運送を行うことができません。
また、自治体(市町村)がタクシー・バス会社やNPO法人等に運行業務を委託することや、事業者協力型自家用有償旅客運送で、タクシー・バス会社がNPO法人等と協力して運行管理・整備管理・配車サービスでかかわることが可能です。
福祉有償運送関係
福祉有償運送は、心身の理由により移動が困難な人が利用対象となる有償送迎サービスです。ドア・ツー・ドア、また場合によってはベッド・ツー・ベッドで送迎が行われます。さまざまな福祉機器を用いて、また場合によっては医療従事者等が同乗して送迎が行われる場合があります。
有償運送の実施目的 | 心身の理由により移動が困難な場合の、自家用自動車を用いた有償送迎 |
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実施可能な事業者 | 自治体(市町村)やNPO法人・社会福祉法人等の非営利法人・団体 |
利用(乗車)対象者 | イ 身体障がい者 ロ 精神障がい者 ハ 知的障がい者 ニ 要介護認定者 ホ 要支援認定者 ヘ 基本チェックリスト該当者 ト その他の障がいを有する者(障がい者手帳を持っていない人) |
複数乗車の可否 | 地域公共交通会議等(地域公共交通会議・協議会・運営協議会)が認めた場合には、1回の運行で複数人の送迎が可能 |
公費の適用 | 訪問介護・居宅介護(通院等乗降介助等)、行動援護、同行援護、重度訪問介護、移動支援(自治体による)、生活サポート事業(埼玉県のみ)、福祉タクシー券(自治体による)、生活保護(移送費)、自治体からの運営費や事業費の補助(自治体による)、介護予防・日常生活支援総合事業(ごく一部の団体のみ)など |
公費の適用外 | 公費の適用外(自費による)の送迎サービスも提供可能 |
使用車両 | 乗車定員11人未満の自家用自動車(福祉車両を含む)。貨物用の自動車や、運転者や企業等による持ち込みの車両も可。 |
運送の対価 | 運送(送迎)中に対する、運送の対価(タクシー運賃の8割程度を目安)を受け取ることができる(実態としては利用者の経済事情を踏まえ、タクシー運賃の8割よりも低廉な料金に設定している場合が多い)。地域の実情に応じた運送の対価や、タクシー運賃の8割を超える対価設定も可能。 需給の変動等に応じて、対価の額を上限5割増・下限5割引として変動させることも可能(ダイナミックプライシング)。 |
必要な手続き | 地域公共交通会議等(地域公共交通会議・協議会・運営協議会)において、その必要性について協議を行う。その協議が調った後に「道路運送法に基づく協議が調っていることの証明書」を受け取り、運輸支局または都道府県・市町村に登録申請を行う。 登録の有効期間は2年または3年間(事業者協力型の場合は5年)。継続する場合は更新登録が必要。 |
福祉有償運送のはじめ方および、日常管理業務など
移動に伴う費用の公的な補助等(公費の適用)
運転者が全員取得する必要がある資格(運転者要件)、修了証の有効期限について
交通空白地有償運送関係
福祉有償運送は、地理的な理由により移動が困難な人が利用対象となる有償送迎サービスです。路線バスが近くを通らない、バス停まで遠いなどといった理由により、公共交通機関を使って日常的な買い物や外出、通学等が難しい地域に居住する人が利用対象者です。マイカーや運転免許証の有無や、年齢を問いません。その地を来訪する者も利用対象者に含まれます。
有償運送の実施目的 | 地理的な理由により移動が困難な場合の、自家用自動車を用いた有償送迎 |
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実施可能な事業者 | 自治体(市町村)やNPO法人・社会福祉法人等の非営利法人・団体 |
利用(乗車)対象者 | 地域住民または観光旅客その他の当該地域を来訪する者 (路線を定めた送迎、デマンド運行、区域を定めた送迎が可能) |
複数乗車の可否 | 路線を定めて、もしくはデマンド運行等で複数乗車が可能。 |
公費の適用 | 訪問介護・居宅介護(通院等乗降介助等)、行動援護、同行援護、重度訪問介護、移動支援(自治体による)、福祉タクシー券(自治体による)、生活保護(移送費)、自治体からの運営費や事業費の補助(自治体による)、介護予防・日常生活支援総合事業(ごく一部の団体のみ)など |
公費の適用外 | 公費の適用外(自費による)の送迎サービスも提供可能 |
使用車両 | 乗車定員11人未満の自家用自動車(福祉車両を含む)および、乗車定員11人以上の自家用自動車(バス)。貨物用の自動車や、運転者や企業等による持ち込みの車両も可。 |
運送の対価 | 運送(送迎)中に対する、運送の対価(路線を定めて行う場合、当該市町村(撤退前のものを含む)または隣接市町村等におけるバス運賃と同額。区域を定めて行う場合、タクシー運賃の8割程度を目安)を受け取ることができる。 区域を定めて行う場合、地域の実情に応じた運送の対価や、タクシー運賃の8割を超える対価設定も可能で、また需給の変動等に応じて、対価の額を上限5割増・下限5割引として変動させることも可能(ダイナミックプライシング)。 |
必要な手続き | 地域公共交通会議等(地域公共交通会議・協議会・運営協議会)において、その必要性について協議を行う。その協議が調った後に「道路運送法に基づく協議が調っていることの証明書」を受け取り、運輸支局または都道府県・市町村に登録申請を行う。 登録の有効期間は2年または3年間(事業者協力型の場合は5年)。継続する場合は更新登録が必要。 |
自治体(市町村)が行う交通空白地有償運送は、自治体ライドシェアとも呼ばれます。
交通空白地有償運送のはじめ方および、日常管理業務など
移動に伴う費用の公的な補助等(公費の適用)
運転者が全員取得する必要がある資格(運転者要件)、修了証の有効期限について
訪問介護・居宅介護等の事業所の方(営利法人を含む)
訪問介護・居宅介護等の事業所(居宅介護・行動援護・同行援護・重度訪問介護・移動支援)の方は、以下の記事をお読みください。
非営利法人・団体の場合
上記で解説している福祉有償運送または下記で解説している訪問介護員等による有償運送(ぶら下がり許可)を実施することが可能です。
福祉有償運送を実施したい場合は、上記の「福祉有償運送関係」の各記事をお読みください。訪問介護員等による有償運送(ぶら下がり許可)の場合は、以下の「営利企業(法人)の場合(訪問介護員等による有償運送)」をお読みください。
営利企業(法人)の場合(訪問介護員等による有償運送・ぶら下がり許可)
訪問介護員等による有償運送(ぶら下がり許可)を実施することが可能です。
ケアマネジャーが作成する介護(介護予防を含む)サービス計画(ケアプラン)または市町村が行う介護給付費支給決定の内容に基づき、資格を有する訪問介護員等が訪問介護サービス等と連続して、または一体として行う輸送であることが条件です。これについて、以下の通り整理しましたのでご確認ください。
有償運送の実施目的 | 訪問介護・居宅介護・行動援護・同行援護・重度訪問介護・移動支援サービス提供時の、自家用自動車を用いた有償送迎(上記を要約) |
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実施可能な事業者 | 訪問介護・居宅介護・行動援護・同行援護・重度訪問介護・移動支援サービスを提供している事業者(営利法人、非営利法人・団体を問わない) |
利用(乗車)対象者 | 訪問介護・居宅介護・行動援護・同行援護・重度訪問介護・移動支援サービスの利用者 |
複数乗車の可否 | 1回の運行で複数人の送迎は提供不可 |
公費の適用 | 訪問介護・居宅介護(通院等乗降介助等)、行動援護、同行援護、重度訪問介護、移動支援(自治体による)、福祉タクシー券(自治体による)、生活保護(移送費)、自治体からの運営費や事業費の補助(自治体による)など |
公費の適用外 | 訪問介護・居宅介護・行動援護・同行援護・重度訪問介護・移動支援サービスとは無関係の場合、公費の適用外(自費による)の送迎サービスは提供不可(法人タクシーまたは介護タクシーであれば、公費の適用外(自費による)の送迎サービスは提供可能 |
使用車両 | 乗車定員11人未満の自家用自動車(福祉車両を含む)。訪問介護員(運転者)等による持ち込みの車両も可。 |
運賃または料金 | 契約事業者が認可を受けた介護運賃(安すぎなければ、利用者の経済事情を踏まえ、タクシー運賃(ケア運賃)よりも低廉な料金に設定することができる) |
必要な手続き | 地域公共交通会議等(地域公共交通会議・協議会・運営協議会)の協議は不要。訪問介護員等に代わって、事業者に一括代理申請(許可申請)を行う。 許可の有効期間は2年。継続する場合は再許可申請が必要。 1事業所あたり事業用自動車+自家用自動車が5台以上の場合は運行管理者(旅客)の有資格者の選任が必要。 |
【大前提】介護タクシー(福祉輸送事業限定)などの許可取得
訪問介護員等による有償運送を行う場合、まず最初に法人の介護タクシー(一般乗用旅客自動車運送・福祉輸送事業限定)の許可取得が必要です。
もしくは、法人タクシー(一般乗用旅客自動車運送)か特定旅客自動車運送の許可取得が必要です。いずれにしても、2種免許所持者が必要です。
個人タクシー(一般乗用旅客自動車運送)や、個人の介護タクシー(一般乗用旅客自動車運送・福祉輸送事業限定)では、訪問介護員等による有償運送を実施することはできません。
訪問介護員等による有償運送(ぶら下がり許可)のはじめ方および、日常管理業務など
運転者が全員取得する必要がある資格(運転者要件)、修了証の有効期限について
乗車中に介護報酬や反対給付(運転手の人件費を含む)を請求しない場合
訪問介護・居宅介護・行動援護・同行援護・重度訪問介護・移動支援事業者において、乗車中に介護報酬が発生しない場合は、利用者を車で送迎しても許可又は登録は不要になりました。また、乗車中においても、上記のような実費徴収を行う場合も同様です。
乗車中に反対給付(運転手の人件費を含む)を受領する場合は有償運送とみなし、許可や登録が必要です。
詳細については、許可又は登録を要しない運送の解説をお読みください。
法人タクシー会社の方へ
上記に記載した通り、法人タクシー会社の場合は、自家用有償旅客運送の運行委託業務を請けるか、事業者協力型自家用有償旅客運送といった形で、交通空白地有償運送や福祉有償運送にかかわることが可能です。
もしくは、訪問介護員等による有償運送(ぶら下がり許可)といった形態で、自家用自動車で訪問介護・居宅介護・行動援護・同行援護・重度訪問介護・移動支援サービスと組み合わせた自家用自動車の有償運送を行うことも可能です(事業用ナンバーの車両で、2種免許保持者のヘルパーさんが送迎を行うことも可能です)。
2024年4月以降は、一部地域や時間帯で「法人タクシー事業者による交通サービスを補完するための地域の自家用車・ドライバーを活用した有償運送(自家用車活用事業)」を行うことも可能となりました。
個人タクシー事業者では、自家用自動車の有償運送に関わることが出来ません。
上記以外の営利企業(法人)などの方へ
上記以外の営利企業(法人)、個人事業主・任意団体などの方は、自家用自動車による有償運送を実施することはできません。
具体的なもので、当社へ比較的お問い合わせが多い事業パターンを以下に列挙いたします。以下のものは現行法と照らし合わせて自家用自動車による有償運送が実現不可能なものですので、ご相談いただいてもお役に立てることがございません。
実現不可能なもの
- 旅館・ホテル事業を行う法人で、かつその宿泊者に限定した有償送迎事業(他ホテルとの差別化のため)
- 非営利法人・団体であれば、交通空白地有償運送が検討されます。営利法人ではできません。過去にスクールバスとして交通空白地有償運送を運行した事例はありますが、宿泊者に限定する(自社だけの顧客の囲い込みを行う)という部分が、有償運送を行う妥当性に欠ける可能性があります。その地域にいらっしゃる方々を含めての送迎を行う場合は妥当であると思います。
- プロパンガス販売を行う営利法人で、かつ運転免許証を返納した地域住民の方を対象とした有償送迎事業
- 非営利法人・団体であれば、福祉有償運送または交通空白地有償運送で可能性はあります。
- いわゆる積載車の有償運送許可を取得している場合で、かつその積載車を利用する顧客を有償送迎したい場合
- そのようなことはできません。
非営利法人・団体であれば福祉有償運送で可能であるが、営利法人では不可能なもの
- 高齢者デイサービス事業を行う営利法人で、かつ高齢者デイサービスに通所する利用者(要介護者・要支援者・基本チェックリスト該当者)に対する自費による病院・買い物等に対する有償送迎事業
- 放課後等デイサービス事業を行う営利法人で、かつ放課後等デイサービスに通所する障がい児に対する学校への有償送迎事業
- 訪問看護ステーションを運営する営利法人で、かつその利用者に対する自費による有償送迎事業
- 居宅介護支援事業(ケアマネジャーさん)を行う営利法人で、かつその利用者に対する自費による有償送迎事業
- 福祉用具貸与事業を行う営利法人で、かつその利用者に対する自費による有償送迎事業
他にもありますが、いずれにしても訪問介護事業等を行っていない営利法人では自家用自動車による有償運送を行うことはできません。また、訪問介護事業等を行う営利法人であっても、訪問介護事業等と連続した・一体となる自家用自動車の有償運送のみに限られます。また、非営利法人・団体を設立することをまったく考えていない個人事業主の方も、自家用自動車による有償運送を行うことはできません。
あなたのアイディアは素晴らしいと思います。しかし、アイディアが浮かんだ場合はなぜそのような事業が今まで生まれていなかったのかを冷静に考えてみましょう。それは、大体認められないからです。
許可又は登録を要しない運送もしくは、事業用自動車(緑ナンバー・黒ナンバー)の介護タクシー(一般乗用旅客自動車運送・福祉輸送事業限定)などの開業をご検討ください。
【最後に】この記事を読んでいただいたみなさまへ
この記事を読んでいただいて、みなさまの現場でお役立ていただければ大変うれしく思います。
また、記事をお読みいただいた方から、時折当社へ「福祉有償運送」や「訪問介護員等による有償運送(ぶら下がり許可)」などの許認可申請に関するご質問やご要望をいただくことがございます。しかしながら、ある程度以上のお話しになった場合には、該当する許認可申請などについては、必ず管轄の行政機関へ直接お問い合わせいただくようにご案内させていただくか、もしくは行政書士へお繋ぎをするなどの対応させていただく場合がございますのでご了承ください。
当社では行政書士が不在のため、一定の内容以上の許認可申請にかかわるお話しになった場合については、上記の通り回答できない場合がございますので予めご容赦いただくますようお願い申し上げます。